図1 188cm反射望遠鏡
英国グラブ・パーソンズ社によって製作された国内最大級の光学赤外線望遠鏡。主鏡の有効径が74インチ(188cm)であることから、通称74(ナナヨン)と呼ばれている。製作に5年の歳月を、建物を含めた総工費は約3億円を要した。1960年の完成当時には世界第7位の口径を誇り「東洋一の望遠鏡」と呼ばれていた。この188cm反射望遠鏡には同型の兄弟機が4台ある。それらはカナダ、フランス、南アフリカおよびエジプトにあり、現在も現役で活躍している。
188cm反射望遠鏡は、ニュートン焦点、カセグレン焦点、クーデ焦点と3つの焦点を持ち、副鏡を交換することにより使い分けることができる。これら3焦点の違いは焦点距離であるが、鏡筒に対する焦点位置が異なるため、取り付け可能な装置の仕様が焦点毎に制限を受ける。一般的には、広視野を観測する軽量装置はニュートン焦点を、姿勢変化を嫌う超精密観測装置はクーデ焦点を、その他にはカセグレン焦点を使用する。近年の共同利用においてはカセグレン焦点(ISLE、KOOLSそしてPI装置のHBSが装着される)とクーデ焦点(HIDES)を使用しての観測が行われている。
この望遠鏡が設置されたのは萩原雄祐・博士(当時は天文台長)の寄与が大きい。1952年にアメリカの天文台を歴訪した彼は、世界の趨勢が天体物理学の発展にあることを痛感し、日本国内に大望遠鏡を建設することを決意する。1953年の正月に昭和天皇に御前講義をされた際に、天体の進化について進講されたのち「このような研究をするには大望遠鏡が必要である。1億5千万円くらいあればできるので、それが欲しい」という旨の直訴をされたのである。この直訴がきっかけとなり、日本学術会議の勧告等が得られ、岡山に188cm反射望遠鏡が建設されることとなった。日本の光学赤外線天文学分野は、この望遠鏡完成を機として大きく成長を遂げる。188cm反射望遠鏡に育てられた天文学研究者は、やがて口径8.2mすばる望遠鏡の完成に寄与することとなった。
図1に望遠鏡本体、図2にドーム外観を示す。表1に188cm反射望遠鏡の光学系、表2に機械系の諸元を示す。また、表3にドームの諸元を示す。表4には10年間の主な補修工事を示す。
2013年の改修については「188cm望遠鏡の改修」を参照。
図2 188cm反射望遠鏡ドーム
望遠鏡 | クラシカルカセグレン | |||
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主鏡 | 有効径 | 1.88m | ||
材質 | パイレックス (ピルキントン社) |
|||
形状 | 放物面 | |||
厚み | 0.27m | |||
重量 | 1.7t | |||
副鏡 | 種類 | ニュートン | カセグレン | クーデ |
材質 | 溶融水晶 | 溶融水晶 | 溶融水晶 | |
外径 | 0.533m | 0.501m | 0.501m | |
重量 | 41kg | 34kg | 34kg | |
形状 | 平面 | 双曲面 | 双曲面 | |
曲率半径 | 5.934m | 5.171m | ||
焦点 | 種類 | ニュートン | カセグレン | クーデ |
焦点距離 | 9.15m | 33.85m | 54.29m | |
口径比 | 4.9 | 18 | 29 | |
焦点面 | スケール (″/mm) |
22.5 | 6.09 | 3.80 |
ハルトマン定数 | 〜0.23 |
マウント | 方式 | イギリス式赤道儀 | |
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重量 | 50t | ||
鏡筒 | センターピース+8角トラス | ||
長さ | 9m | ||
駆動速度 モード |
クイック | スロー1 | スロー2 |
速度(/min) | 40°n | 18′ | 5~90″ |
駆動モータ | DCサーボ | ACインダクション | DCサーボ |
赤緯微動可動範囲 | 5°30 | セルフセンター機構付きスロー1スピードで駆動 | |
表示(読取) | エンコーダー | アブソリュート | インクリメンタル |
赤経(RA) | 0.0625秒 (0."9375) |
0."1 | |
赤緯(Dec.) | 1."5 | 0."1 | |
指向精度 | ±15″ |
直径 | 20m |
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高さ | 23m |
台車 | 48個 |
回転速度 | 72°/min |
回転部総重量 | 150t |
開口部 | 幅6m x 長さ22m110° |
スリット | 上下開き(2枚) |
スリット開閉時間 | 660秒 |
防風ブラインド | 6m x 15m |
昇降床 | 直径 10m |
揚程 3.8m | |
速度 2m/min(通常) | |
積載荷重 | 1t(通常)、8t(西床微動時) |
製造会社 | 石川島播磨重工業 |
2003年 | ドーム回転モーターオーバーホール、電磁ブレーキ修理、回転ゴムコントローラー交換 |
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2003年 | 鏡筒部・マウント部塗装 |
2004年 | ドーム大規模改修 |
2006年 | ドーム雨漏対策工事 |
2006年 | 建物の耐震補強工事 |
2008年 | ドームスリット修繕工事 |
2009年 | ドームトロリー線改修工事 |
2010年 | ドームスリット巻上機ドラム研削およびウェイトシーブ外れ止め工事 |