MuSCAT (正式名称:Multicolor Simultaneous Camera for studying Atmospheres of Transiting exoplanets) は、天体の光を3つの波長帯(青:400-550nm, 赤:550-700nm, 近赤外:800-920nm)に分けて同時に撮像出来る、188cm反射望遠鏡のカセグレン焦点用観測装置である(図1、表1、Narita et al. 2015)。食(トランジット)を起こす太陽系外惑星の観測を主目的に開発された装置であり、惑星がトランジットすることにより主星の明るさが僅かに暗くなる現象(トランジット現象)を、3つの波長帯で同時かつ高精度に観測することが出来る。高い測光精度を実現するため、出来るだけ広い視野と高い効率が得られる光学系や検出器(CCD)が採用されており、これまでに口径2m級の地上望遠鏡の観測装置として世界最高レベルの測光精度が達成されている (Fukui et al. 2016a)。
MuSCATで目指す科学目的は大きく分けて2つあり、一つは別のサーベイで発見されるトランジット系外惑星候補の発見確認を行うこと、もう一つは発見された系外惑星の大気の性質を調べることである。2013年度より日本学術振興会の科学研究費助成事業(研究代表者:成田憲保)を受けて装置の設計・製作が開始され、2014年12月に完成、ファーストライト(初試験観測)が実施された。2015年後期より共同利用時間を利用して本格運用が行われている。これまでに(2017年12月時点)、生命が存在しうる惑星K2-3dのトランジットの観測に地上で初めて成功したり (Fukui et al. 2016b)、史上最も熱い系外惑星KELT-9bの発見に貢献する (Gaudi et al. 2017) など、重要な科学成果が挙がっている。
図1 MuSCATの外観
正式名称 | Multicolor Simultaneous Camera for studying Atmospheres of Transiting exoplanets |
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搭載望遠鏡/焦点 | 188cm反射望遠鏡/カセグレン焦点 |
光学系 | F値変換光学系+オフナー光学系+ダイクロイックミラー(2枚) |
最終F値 | 4.1 |
CCDカメラ | Princeton Instruments社PIXIS1024 CCD x 3台 |
CCDサイズ | 1,024 x 1,024ピクセル(13.3 x 13.3 micron) |
ピクセルスケール | 0.36秒角/ピクセル |
視野 | 6.1 x 6.1分角 |
フィルター | SDSS g2 (400-500nm), r2 (550-700nm), zs,2 (800-920nm) |
完成年(ファーストライト) | 2014年12月 |
参考文献・リンク
MuSCATホームページ
Narita, N., et al. 2015, JATIS, 1, 4, 045001
Fukui, A., et al. 2016a, ApJ, 819, 27
Fukui, A., et al. 2016b, AJ, 152, 171
Gaudi, B. S., et al. 2017, Nature, 546, 514