環境モニター

岡山天体物理観測所では観測環境整備の一環として環境モニターを設置している。主な目的は観測中に即時に環境を把握すること、その情報を蓄積することで後の解析に役立てることである。観測効率の向上や望遠鏡など観測機器の保護の観点から環境モニターは必須である。また情報を定量化することによって、その評価を客観的なものにすることができる。情報を提供する手段としてWorld Wide Webを利用しているため、観測所内では場所を選ぶことなく最新の情報を得ることができる。情報は公開と同時にデータベースとなり、観測機器による観測データとともに蓄積される。環境モニターは、以下の4つである。

気象モニター(1994年設置)

気象モニターは、気温、気圧、湿度、風速、風向、降水量のデータを自動で取得しWWWで公開、同時にデータベース化するシステムである(図1)。環境モニターの根幹と なるこれらのデータにより観測の可否、天気傾向の把握が行われている。観測所内の屋外複数個所と188cm ドーム内に設置されている(図7)。

図1 気象モニターのweb 出力例(直近1週間の変動)

雨滴センサー(2002年設置)

観測ドーム内に納められた望遠鏡などの装置群を降雨から保護するために、観測所内の複数個所に雨滴センサーを設置している。降雨を検知すると188cm 反射望遠鏡制御ソフトウエアが警告を発するようになっている(図2)。

図2 雨滴センサー(本館東側)

スカイモニター(1999年設置)

大気透明度を把握するための全天カメラで、魚眼レンズとCCD カメラ(2008年からは民生用のデジタルカメラ)から構成されている。約1 分ごとに画像を取得し、気象モニターと同様WWW にて公開されている。観測中屋外へ出て暗闇に眼をなじませる手間が省けるため、観測時には必須のモニターとなっている。WWW では2005年8 月以降のデータがアーカイブされており、観測後に天気の状況を確認できる(図3、4)。

図3 スカイモニター

図4 スカイモニターによる全天画像

シーイングモニター(2004年設置)

地球大気による天体像のゆらぎの大きさ(シーイング)は、天体観測条件のなかでも、精密な観測を実行する上で重要な要素である。岡山天体物理観測所ではDiff erential Image Motion Monitor(DIMM)による星の像を利用したナチュラルシーイングの測定を行っている。2004-2008年に定常運用していたが、現在はドーム故障のため休止している(図5、6)。Diff erential Image Motion Monitor は、二つの一定距離離れた開口で同じ星の像を撮影し、それらの重心位置の相対的なゆらぎを調べてナチュラルシーイングを推定する装置であり、シーイング調査の基本的な手法の一つとして多くの観測所等で運用されている。結果については「観測環境」の項を参照のこと。

図5 シーイングモニター(DIMM)本体

図6 シーイングモニタードーム外観

図7 環境モニターの構内配置