188cm反射望遠鏡の主鏡、副鏡、第三鏡は毎年6月にアルミ再蒸着を行い鏡面反射率の改善を図っている。蒸着直後の鏡面反射率は91%(波長670nm)だが、1年間使用するとアルミニウムの酸化、塵挨で60%近くまで低下する。そこで近年は鏡面反射率を維持するために、約1.5か月毎に各鏡の洗浄を行うことにより年間を通して80%以上の反射率を維持している。洗浄の手順は次の通りである。まず主鏡の周辺を養生し、鏡面に付着しているゴミ類を圧縮空気で吹き飛ばす。その後、レンズクリーナー(OLYMPUS EE3320)を鏡面にスプレーしながら、レンズクリーナーを含ませた脱脂綿布で鏡面を軽く叩くようにして鏡面のゴミ、油分等を除去する(図1)。鏡面を擦ってしまうとアルミ面に細かいキズができ、散乱光を増やすことになる。
図1 洗浄作業の様子
洗浄の前後には反射率を測定して、変化を調べている。反射率測定には可搬型の反射率測定装置μScan(Schmitt measurement社)を使用している。この測定装置は、測定ヘッドを鏡面に軽く押し当て、レーザー光(波長670nm)を斜めから照射し、反射した光の強度を測定して、反射率及び散乱量を算出する。図2は188cm主鏡を測定している様子である。2008年~2009年の主鏡反射率の推移を図3に示す。期間は6月の蒸着直後から翌年の蒸着前までの1年間である。洗浄により数ポイント反射率が改善し、年間を通して反射率の変化を1割程度に留めることに成功している。
図2 μScan による主鏡反射率の測定。
図3 主鏡の反射率の推移
副鏡、第3鏡も当初同じように洗浄していたが、蒸着作業の簡素化を図るために、まず第3 鏡に二酸化ケイ素(SiO2)のオーバーコートを施した。アルコールによる拭き上げだけで高い反射率(90%近く)の維持が可能となった。副鏡は観測時鏡面が下を向いている状態なので比較的反射率の低下は少ないが、同様にSiO2のオーバーコートを施した。オーバーコート後は、毎年の再蒸着が不要となり、蒸着作業の負担軽減にも寄与している。