図1 岡山MITSuME望遠鏡
50cm反射望遠鏡は、ガンマ線バーストの光学残光を即応観測することを目的として2004年に設置された、観測所内で最も新しい望遠鏡である。研究プロジェクト名“ MulticolorImaging Telescopes for Survey and Monstrous Explosions”にちなみ、岡山MITSuME望遠鏡と呼ばれている。
ガンマ線バーストは、この宇宙で最も明るい物理現象であり、宇宙の暗黒時代を観測する有力な機会を与えてくれる。しかし、バーストの発生を事前に予測することはできない上に、残光は急速に暗くなってしまうので、機会を逃さず観測するには、専用の観測施設が必要となる。そこで、科学研究費補助金(学術創成研究「ガンマ線バーストの迅速な発見、観測による宇宙形成・進化の研究」代表者:東京工業大学河合誠之教授)によって設置されたのが、この岡山MITSuME望遠鏡である。
岡山MITSuME望遠鏡は、完全に無人運用されているロボット望遠鏡であり、ガンマ線バーストへの望遠鏡の指向から追尾、撮像、解析処理まで自動化されている。望遠鏡、ドームともに高速駆動ができるように設計されており、その駆動速度は国内の望遠鏡では最速の部類に属する。カセグレン焦点には3色(バンドg',R,I)同時撮像カメラが搭載されており、残光の光度変化測定から放射領域の物理構造を、各バンドの強度比から距離を導くことができる。
岡山MITSuME望遠鏡は、ガンマ線バーストの残光観測を行う国際的な観測網The Gammaraybursts Coordinates Networkに参加している。2004年10月から本稿執筆に至る期間に、131回の観測を行い、残光を27回検出した。そのうち、観測条件が良好で速報性の高いイベントについて47回報告を提出している。
これまでに捉えた残光で最も遠方のものは、実に120億年彼方の現象であった。我々は、2006年1月15日に発生したガンマ線バーストGRB060115を、世界で最初に撮像観測し、宇宙初期のイベントである可能性が高いことを示した。取得した3バンドの画像のうちg'バンドには残光は検出されず、RcバンドとIcバンドで検出されたため、高赤方偏移天体であることが強く示唆されるからである。我々の観測報告を受け、イタリアのグループが欧州南天天文台の口径8mの望遠鏡(VLT)で首尾よく分光追観測を行ったところ、赤方偏移3.53、宇宙創成後17億年の現象であったことが確認された。
図1、2にドーム及び望遠鏡を示す。また表1に諸元を、表2に3色同時撮像カメラの諸元を示す。図3に3色同時撮像カメラの外観と光路を示す。
図2 岡山MITSuME望遠鏡ドーム
図3 3色同時撮像カメラ外観と光路
望遠鏡 | |
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有効径 | 500mm |
主鏡・副鏡材質 | Zerodur |
光学系構成 | クラシカルカセグレン |
+コマ収差補正レンズ | |
最終口径比 | F/6.5 |
中心遮蔽率 | 22% |
ハルトマン定数 | 0.7 arcsec |
架台 | L型フォーク式赤道儀架台 |
分解能 | 1.04 arcsec/DN(20bit/rev) |
最大指向速度 | 6 deg./sec |
指向精度 | 9 arcsec |
焦点までのフランジバック | 335mm |
メーカー | 中央光学 |
ドーム | |
直径 | 4m |
スリット幅 | 1m |
回転速度 | 9.3 deg./sec(39 sec/rev) |
分解能 | 1 deg./DN |
メーカー | ニッシン商会 |
CCDカメラ | |
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型式 | ALTA U6(Apogee社) |
CCD | KAF-1001E(KODAK社) |
構造 | 表面照射タイプ |
画素数 | 1024×1024 |
視野 | 26 min. × 26 min. |
画素サイズ | 24μm×24μm |
画素スケール | 1.5 sec/pix |
A/D 変換 | 16 bit |
読み出しノイズ | 6-12電子 |
読み出し時間 | 1秒 |
ゲイン | 1.2-1.3電子/ADU |
暗電流 | 0.3電子/sec @ 250K |
動作温度 | 240K(冬季)、260K(夏季) |
線形保持範囲 | <66,000電子(<55,000 ADU) |
フィルター類 | |
フィルター | SDSS g’, Rc, Ic |
光路分割 | ダイクロイックミラー2枚 |
ダイクロ1 | λT50=720nm、頂角 0.31度 |
ダイクロ2 | λT50=580nm、頂角 0.43度 |
メーカー | 朝日分光 |