91cm反射望遠鏡

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図1 91cm反射望遠鏡

日本光学工業株式会社(現・株式会社ニコン)によって製作された国産大口径望遠鏡の1号機である。主鏡の有効径が36インチ(91cm)であることから、通称36(サブロク)と呼ばれている。架台がフォーク赤道儀式で、望遠鏡もカセグレン焦点専用に作られたため、188cm望遠鏡と比較してコンパクトな外観である。

開所当時、91cm望遠鏡は、光電測光観測により天体の明るさの精密な測定と、時間変化をとらえることを目的としていた。この光電測光観測は、大沢清輝・所長(当時)によって日本に導入された新しい観測手段であった。一方で、188cm望遠鏡は、分光観測が主な観測手段で、天体の組成や速度の情報を得ることを目的としていたため、両者は研究において相補的な関係にあった。また、並行してZ分光器による、明るい恒星の分光観測が行われ、山下泰正・他によりアトラス“An Atlas of Representative Stellar Spectra”として出版された。1990年代から2000年代初頭にかけてはCCDを利用した偏光分光撮像装置OOPS、偏光分光測光装置HBSなど偏光に特化した観測装置が取り付けられ、恒星等に付随するダストに関する学術的な成果が多く出版された。さらに、Nikon分光器による恒星のCCD分光観測が行われ、デジタル分光アトラス“スペクトル物語”として公開された。

共同利用は2004年に停止し、現在は広視野赤外線カメラ(OAOWFC)に改造されている。光学系は、フォワードカセグレン系と準シュミット系を組み合わせており、0.9平方度を一度に撮像できる。駆動系は、赤経軸・赤緯軸ともに単一モーターに更新されており、最大4 deg./secの高速指向が可能となっている。この望遠鏡はキュー観測を主体とした自律制御系を目指しており、ガンマ線バーストの残光観測や、銀河面の変光星探査を主な研究課題としている。

図1に91cm反射望遠鏡、図2にドーム外観を示す。図3は、広視野赤外線光学系のレイアウトである。表1に光学系、表2に機械系の諸元を示す。また表3にドームの諸元を示す。

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図2 91cm反射望遠鏡ドーム

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図3 広視野赤外線光学系のレイアウト

表1 91cm反射望遠鏡 光学系
望遠鏡 主鏡 有効径 0.91m
  材質 パイレックス
  形状 放物面
  厚み 0.18m(縁)、0.165m(中心)
  重量 262kg
  焦点距離 3.2m(F/3.5)
  ハルトマン定数 0.9
光学系 焦点 焦点距離 2.28m
  口径比 2.5
  焦点面 スケール(″/mm) 90.6
91cm反射望遠鏡 機械系
マウント 方式 フォーク式
  重量 6t  
駆動速度
モード
クイック セット ガイド
赤経[/s] 4.0 deg 100 arcsec 1.8 arcsec
赤緯[/s] 4.0 deg 100 arcsec 1.8 arcsec
読取 エンコーダー 最小分解能  
赤経 23bit 0.15 arcsec  
赤緯 23bit 0.15 arcsec  
指向精度 10 arcsec    
表3 91cm反射望遠鏡ドーム
直径 7.5m
高さ 9.7m
回転速度 180°/min
開口幅 2.6m
防風ブラインド なし
昇降床 直径 3.5m
  揚程 1.5m
  速度 2m/min
製造会社 石川島播磨重工業
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