岡山天体物理観測所と地域の関わり

進行観望会も長くやっているという話ですし、今後のそのあたりのお話もぜひ。

沖田1年に1カ月ぐらい観望会となるかもしれない。

泉浦月に何日かとか、浅口市がどういう希望を出されるかによるのですけれども、ある程度は観望会が開けるようにするという方向の議論に入ろうかとしています。

前原市の事情もいろいろあるのだけれども、浅口市としてこの国立天文台とか今度の3.8メートル望遠鏡とかとうまくやっていこうという意識は市長以下お持ちのようなので、そこは天文台側も上手につき合ってぜひやってほしいと思う。ウイン・ウインになるのではないかな。

進行そもそも今の観望会だって、博物館と一緒に実施する形式になっているじゃないですか。それがすごいなと思って見ていました。

泉浦そうですね。それは本当に隣接しているからですね。

沖田共同利用というのはもうしていませんということになると、これからはそういう意味ではやりやすくなるのではないか。

泉浦これからは浅口市が予算を組んでやっていますというようになるといいのではないかと思います。

沖田だから、そういうようにうまいことつなぎながら。本当に使えないようになったらしようがないのだけれども、観望会みたいなものもNPO法人を立ち上げてやるとか、そういうようになっても、別におかしくはないとは思う。

泉浦観望会をやるためのNPO法人を立てるなら、博物館主導でやってくださるとよいかなと思います、望遠鏡運用に関しては東工大がメインになるとして。

前原そうだ。今まで東工大の話が出ていなかったけれども、そうですね。

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泉浦東工大が今年(2017年)、系外惑星観測研究センターという名前の内部組織をつくりました。

沖田佐藤君(東京工業大学 佐藤文衛 准教授。元岡山天体物理観測所研究員)を中心に。

泉浦やはりトップは教授ということで、中本さんという学科長の教授、昔から原始惑星系円盤の中のダストのいろいろな研究をされている方なのですけれども、その方がセンター長になられました。佐藤さんは実際の観測運営の担当になって、他の先生方も同センターに名前を連ねてくださって、こういう形の組織、集団をつくって、そこが中心になって188センチ望遠鏡を運用するという話を進めています。そこが中心になって運用するために、東工大は概算要求も出して、それは今年のクリスマス頃に予算がつくかどうか決まる話です。その概算要求が認められれば、資金的なものは割としっかりとしたものになる。概算要求がつかなかったとしても(注:平成30年度には予算措置はなかった)、当面の3年ぐらいは科研費とか研究費を集めると何とかなるだろうとの見通しです。

前原最初、私が聞いたころよりは大分盛り返しているというか、いいほうに行っているね。

泉浦やはり佐藤さんが努力して、東工大の中でみなさんから同意を得てセンターができたことが大きい。それが認められたので、国立天文台も対応できるようになった。

前原井田さん(井田茂 東京工業大学教授。惑星形成の理論研究者)もバックアップをしているわけでしょう。

泉浦東工大は系外惑星研究の研究者が多く、10人ぐらいいらっしゃるのです。

前原10人もいるのか。そういう人たちがバックアップはすべきだしね。

泉浦理論の方は陣容が揃ってきたので、そろそろ観測方面も強化したいという話があるそうです。

前原そちらへ行くのは、私は東工大としても長い目で見れば悪い話ではないと思うけれどもね。

泉浦そこで概算要求が認められると随分いいですね。東工大の中で系外惑星の観測的研究も大分地位が上がってみなさんから認知されるようになって良いのではないかと思います。

前原でも、先ほどあなたが自動化すると言ったでしょう。例えばプロジェクトが2年後か知らないけれども、立てるとしたら、そこに佐藤君がどのくらいコミットすると考えているのですか。

泉浦得られたデータの解析を自動化する方面で彼の協力が必須です。望遠鏡を自動で動かすのは目処が立ったのですけれども、難しいと思うのは、サイエンスをちゃんとやるためのデータを取ることで、例えば1,000個の天体を観測したいです。この日はこの天体とこの天体を良いクオリティーで撮れて、あれとあれはだめだったとかをデータベースで常に管理して、毎日毎日。

前原更新していかなければいけない。

泉浦毎日毎日、どれをやるべきかが変わっていくわけです。

前原そうしたら、その周期とかいろいろあるから、かなりある意味。

泉浦そこにAIが必要なのです。

前原なるほど。でも、結局、佐藤君が絡んでくれるわけだ。

泉浦そうでないと、年間300日データをとっても、変なデータとかいま一つなデータが多いとか、研究目標の達成に対して最高の性能・効率が出せないということにもなりますので。

前原なるほど。そうしたら、第二の地球が見つかったというのを今度出すわけね。

泉浦つまり、結局最後は、研究はG型矮星に戻ると思うのです。

前原だからG型矮星に戻ってさ。

泉浦今は例えばM型矮星でハビタブルゾーンと言っているけれども。

前原あれはまだね。

泉浦最後はG型矮星に戻ると思うのです。しかも太陽系のようなですね。そうすると、地球を見つけるのはすごく難しいのです。

前原皆さんが手を出していない分だけ。

沖田M型矮星よりは相当難しい。

泉浦G型矮星のハビタブルゾーンにある惑星を見つけるというのはすごく難しい。しかも、木星ぐらいだったら見つかるのですけれども、G型矮星のハビタブルゾーンにある地球サイズの普通の岩石惑星を見つけるというのは。

沖田掩蔽の違いをするというのは相当難しいのだよね。

泉浦難しいので、地道にやり続けないと当分出てこない。

前原だから、そういう意味では、大望遠鏡でそれに取り組むかというと、みんな二の足を踏むかもしれないね。

沖田時間をくれないのです。

泉浦時間がないのです。実は188センチ望遠鏡だと口径が足りないかなという気もしているのですけれども、最初はそこでいかないと。

前原少し暗いものまでいくか。

泉浦最初は188センチから始めて、いずれ将来、どこかの望遠鏡、4メートルぐらいのでやらないと。

前原3.8メートルを使えばいい。そうなったら本当にあなたの考えている内容がわかってきた。

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泉浦この間、佐藤君とちょっと話したとき、彼も考えていると言っていました。やはりG型矮星で何か研究を展開していかないと将来的に厳しいだろうと感じます。

前原結局、ついに第二の地球が見つかりましたと言えるわけでしょう。

泉浦随分先だと思いますけれどもね。簡単ではないので、技術革新を幾つかしないと。

沖田世界に抜かれる可能性もいっぱいあるからね。

泉浦もちろん、アメリカやヨーロッパのグループは昔からG型矮星をずっとやっているので、彼らはすごいデータの蓄積があります。そこを今からやるのは大変なのですけれども。でも、やらないでいるわけにはいかないので。

前原それはもうやってみたら。やってみたら案外なものが見つかったりするのが天文学の世界だと思う。

沖田でも、そういうグループと一緒になってやるという道はもうない?

泉浦一緒になってやろうとするなら、同じ(技術)レベルを持っていないと相手にされないので。

沖田だけれども、そこまではやるとしてね。

泉浦そういう意味では自動望遠鏡で非常に高い精度でうちはやっていますよというぐらいのものを持っていないと仲間に入れてもらえないでしょう。

沖田最終的には自分たちだけではなくて仲間と一緒でも、それはそれでセンセーショナルな出来事だからね。

泉浦はい。東アジアは東アジアで、それはちゃんと仲よくやっていく。

前原仲よくやってください。それは別にけんかする必要はないものね。

泉浦非常にありがたいことに、資金獲得に協力するから188センチ望遠鏡を使った新たな共同研究を立ち上げようか、といった話もあります。

前原そんなものがあるのだ。

沖田東アジアは、今、韓国と日本と台湾と中国も入っている。

前原西のほうにも1個ぐらいなかったか。

泉浦トルコです。最近、ついにトルコの人たちとの共同研究で惑星が1個見つかり、論文が出版されました。随分かかりました。2007年から始めて10年もかかってしまって関係者には申しわけないですね。

前原でも、いいではないか。メインシステム、メインテレスコープとして188センチがあれば、そういう意味では東アジアの人が喜ぶかもしれないね。

沖田自由に使える望遠鏡が1つないとそれはだめですね。やろうとしても。

泉浦自由に使える望遠鏡があるといろいろと、いわゆるクレイジーな観測ができるので。

沖田実際始まるのは来年の4月から。

泉浦体制移行としては来年の4月ですね。

沖田だけれども、3月までは共同利用のスケジュール。

前原12月でしょう。

泉浦共同利用観測は12月に終わりで、だから、1月から3月はどうするのですかとよく聞かれるのですけれども、グレーですと答えています。

前原だって、それは入れる準備やらテストやら、クレイジーなこともやってみる。多分そのくらい必要だ。

泉浦科研費で分光器を改造する予定なので。

沖田人手は足りているのですか。

泉浦今は足りていませんが、これから努力します。

前原でも、その話が聞けてほっとした。これは岡山の精神。観測所の名前はもう使わなくなってしまうけれども、精神というか、そういうものは生き続けるということ。

沖田今あるインフラを新しくつくろうとすると、それこそ結構かかるわけで。

泉浦インフラは大変ですね。やはり道路を引いて、電線引いて、ネットワークケーブルを引いて。

進行道路を引くところからですね。

泉浦というのはある。

沖田水道だってやっとこさ、ここまで来るようになったのだものね。

泉浦建物を建てて、水道を引いて。

前原井戸を使っていましたからね。私たちのころ。

沖田だから、そういうインフラは相当なお金がかかる。新しくしようとするとね。その部分も価値としてちゃんと積算しないといけない。