2010年4月6日

自然科学研究機構 国立天文台


観測結果


大質量星形成領域に円偏光の巨大な広がりを発見

図4 オリオン大星雲の円偏光の赤外線観測結果

[高解像度版(RGB)] [高解像度版(CMYK)] [高解像度版(白黒)]

画像クレジット:©国立天文台

円偏光度(観測されたすべての光の中の円偏光成分の割合)をカラー表示しています。 図の黄色部分が、我々観測者から見て、光(電磁波)の電場ベクトルが左回り(反時計回り)に回転している円偏光を表します。 赤色部分が右回りの円偏光を表します。 ※論文の図からカラーを変更してあります。

色が明るいところほど円偏光度が強くなっています。 円偏光度は、17%(左回り)から -5%(右回り)まで分布しています。 星形成領域で見つかっている円偏光のなかでも特に大きいものです。

図の上にあるバーは、太陽系の大きさを元にした比較用のバーです。 なお、観測に用いた波長帯は2.14μmです。

円偏光の広がりは、太陽系の大きさのおよそ400倍以上に相当しています。 このような巨大な円偏光の広がりは本研究によって初めて明らかになりました(注1)。 また、右回転と左回転の円偏光がこの領域を取り巻くように交互に表れている点も特徴的です。

この円偏光の強い領域はオリオン大星雲でも有名な大質量星形成領域に位置しています(注2)。 この領域では複数の大質量星が生まれつつあると考えられています。 IRc2天体と呼ばれる天体は太陽の20倍程度の質量を持つと考えられています。 一方、この星雲で他に卓越した円偏光領域が見られないことも、本観測で初めて示されました。

オリオン星雲では、太陽と似た星も多数生まれています。 本観測画像中にもそのような星と思われる多数の点源がとらえられていました。 それら個々の円偏光も調べた結果、概して円偏光は小さいということがわかりました。


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(注1) このような広大な円偏光が発見されたこと自体が驚きです。 円偏光メカニズムについてはQ&Aのページをご参照ください。 このような円偏光がどうして作り出されたかについても研究グループでは調べています (Fukue et al. 2009, The Astrophysical Journal Letters, Volume 692 [論文URL] [プレプリントURL])。 [上へ戻る]

(注2) 図4の下部左側に見えるのはトラペジウムです。トラペジウム右上に強い円偏光が広がっています。 この円偏光の強い領域が、オリオン大星雲でも有名な大質量星形成領域(BN/KL領域)に位置しています。 この領域では大質量星の形成にともなう巨大な空洞の存在が考えられています。 [上へ戻る]


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