2010年4月6日

自然科学研究機構 国立天文台


解釈


大質量星形成領域の巨大な円偏光と太陽系の生命

図5 大質量星形成領域の円偏光とそこで生まれた原始太陽系のイメージ図

[高解像度版(RGB)] [高解像度版(CMYK)] [高解像度版(白黒)]

画像クレジット:©国立天文台

中央の明るい部分が大質量星を表します。その周囲に大質量星形成にともなう大規模な構造が作られています。 図の薄水色は、星形成に伴うジェットなどにより若い星の周囲に空洞が作られていることを表しています。

赤色と薄黄色がそれぞれ逆方向の円偏光を表しています。 大質量星の形成に伴う構造の周囲に大規模な円偏光が広がっていることを表しています。

左上の小さい円盤が原始太陽系を表します。 原始太陽系が片方向の非対称な円偏光に飲み込まれていることを表しています。

我々の観測結果からは、オリオン星雲のような大質量星形成領域において太陽系が形成され(注1)、 オリオンで観測されたような大規模な円偏光に原始太陽系が飲み込まれ、 もっぱら片方向の円偏光に照射を受けた結果、 アミノ酸(先駆体)に鏡像異性体異常が引き起こされ、選択的に左型アミノ酸に偏り、 後に地球上に隕石と共に持ち込まれたと推察することができます。 このことは、地球上の隕石の研究から太陽系の近くに大質量星が存在していたことが示唆されていることと合致しています(注2)。

図6 大質量星形成領域の円偏光とアミノ酸、初期地球のイメージ図

ワイド版:[高解像度版(RGB)] [高解像度版(CMYK)] [高解像度版(白黒)]

四角形版:[高解像度版(RGB)] [高解像度版(CMYK)] [高解像度版(白黒)]

画像クレジット:©国立天文台

図6のイメージ図は、各部分が以下のような状況を表しています。

  • 図左部:大質量星形成領域の円偏光に原始太陽系が照射されています(図5と同様です)
  • 図中央部:図左部の、原始太陽系雲の一部を局所的に拡大したイメージです。原始太陽系に円偏光が降り注いでいる状況を表しています
  • 図右部:アミノ酸の偏りをもたらす隕石が地球に降りそそぐ状況を表しています(左の二つの図のような円偏光の照射時期が終わって、太陽系内で地球の形成が進み、時間が経った後の状況です)

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(注1) 太陽のような星の生まれる環境としては、(1) オリオン星雲のような大質量星形成領域において多数の天体と共に生まれる場合と、 (2) おうし座のような、小質量星ばかりが生まれる星形成領域で孤立して生まれる場合の2つの可能性が挙げられます。 [上へ戻る]

(注2) 地球上の隕石の短期間放射性核種の研究によると、太陽系の近くで過去に超新星爆発が起こっていたことが示唆されています。 超新星爆発は、太陽よりも寿命が短い大質量星の末路と考えられています。 これらのことから、大質量星が過去に太陽系の近くに存在していたことが示唆されています。 [上へ戻る]


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