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2022年12月の星空情報

2022年12月の星空情報です。一年で夜が最も長い時期を迎えます。

東の空に続々と昇ってくる冬の星座。明るい恒星が多く見える季節ですが、今年はその中でも飛び抜けて明るく輝く、見慣れない赤い星があります。2年2か月ぶりに地球と接近している、火星です。

星座の中を「惑う」ように位置を変える惑星の動きは、人類が太陽系の姿を解き明かすための道しるべとなりました。

今月中旬には、ふたご座流星群の活動が活発になります。13日夜から15日明け方にかけての2夜、特に多くの流星が見られそうです。今年は、深夜になると下弦前の月明かりの影響を受けるため、まだ月が高く昇ってこない夜半前の時間帯の観察がおすすめです。

12月下旬、夕方の南西の空では、土星と木星の二つの惑星が目立っています。年末にはそこに月も加わります。夜空を穏やかに楽しみながら、2022年を締めくくりましょう。

12月の月の暦

8日:満月/16日:下弦/23日:新月/30日:上弦

ワンポイント・アドバイス

地球と、その一つ外側の軌道を687日の周期で公転している火星とは、約780日ごとに会合(太陽から見て同じ方向に来ること)を繰り返します。地球から見ると、12月8日に火星が太陽とちょうど反対の方向を通過します(衝)。その前後では地球と火星との距離が近くなっており、12月1日には約8145万キロメートル(注)の距離で「最接近」となります。この時期の火星は、視直径が大きく明るく見えるため、夜空で赤い輝きが際立ちます。

地球から見る火星は、普段は天球上を西から東へと毎日少しずつ移動しています(順行)。ところが、2022年の10月末から2023年1月半ばまでの期間は、東から西へと「逆行」中です。衝の頃、地球が火星より速い公転速度で追い越す間の一時期、天球上では火星が後退して見えるのです。

古代から中世までは、「宇宙の中で静止している地球をほぼ中心として、他のすべての天体がその周りを回転している」とする考えが受け入れられていました。しかし、この惑星の逆行運動やそれに伴う明るさの変化は、地球を中心とする単純な同心円運動では解釈ができませんでした。そのため、「惑星が小さな円を回転しながら、その円全体が大きな円に沿って回転する」という、複雑な体系が考え出されました。

17世紀の冒頭、惑星の軌道が太陽を焦点の一つとする楕円軌道であることを見出したのが、ケプラーです。この時、手掛かりとなったのは、ブラーエによる正確な火星観測のデータでした。地球に近く、公転軌道の離心率が大きな火星だからこそ、見かけの位置の変化や明るさの変化が顕著に表れ、天体の運動を正確に分析することができたのです。

(注)日本時間で同日11時頃の地心距離(地球中心と対象天体の中心の間で計算した距離のこと)。火星が離心率の大きい楕円軌道を公転するため、地球に最接近する時の距離は毎回異なり、今回は“中程度”の接近と言うことができる。

関連リンク

文:内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)

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