ほしぞら情報2026年4月

(解説)パンスターズ彗星の観察チャンス(2026年4月)

パンスターズ彗星の位置。2026年4月11日から22日、日の出1時間前の東京の星空
画像:中解像度(2000 x 1265) 高解像度(5500 x 3480)

パンスターズ彗星が見頃

2025年9月に発見された彗星(すいせい)、PANSTARRS彗星(C/2025 R3 (PANSTARRS)、本記事では「パンスターズ彗星」と表記)が、2026年4月に見頃を迎えます。日本から比較的条件よく見えるのは4月中旬から22日頃までの明け方の空で、そのときの明るさはおよそ3等から4等になることが期待されます。位置が低空のため、3等の明るさの彗星を肉眼で見るのは少々難しいのですが、よく晴れた空が澄んだ日に暗い場所で見た場合には、肉眼でぼんやりとした彗星の姿を観察できる可能性があります。また4等程の場合でも、双眼鏡を使うことで観察が可能になると予想されます。さらに適切に設定したカメラによる撮影では、尾の様子も写すことができそうです。位置や予想される明るさの情報を紹介します。

パンスターズ彗星の概況

パンスターズ彗星は、2025年9月8日に発見された新彗星です。発見当初は、太陽から遠かったこともあり約20等と暗い彗星でしたが、一般的な彗星よりは急なペースで増光した結果、3月後半には8等ほどの明るさとなって小型の望遠鏡でも観察が可能となりました。暗い空で撮影された写真には、尾が伸びた様子もみられます。

パンスターズ彗星が近日点を通過する(太陽に最も接近する)のは、4月20日7時頃(日本時。世界時では19日22時頃)で、このとき彗星は太陽から0.50天文単位(約7500万キロメートル)の距離まで近づきます。この前後の時期で彗星活動(注1)はピークを迎えるものと予想されます。地球への最接近は4月26日18時頃(日本時。世界時では同日9時頃)で、この時の彗星と地球の距離は0.49天文単位(約7300万キロメートル)です。

このような状況などを考慮すると、パンスターズ彗星が最も明るくなるのは4月25日頃と予想されますが、見かけの位置が太陽に近く、彗星の観察には不向きです。この直前となる4月15日から20日頃の明け方が、最も観察しやすい時期だと考えられます。暗い場所で空の澄んだ時に観察した場合には、肉眼でかすかに見えるかもしれません。市街地では肉眼で見るのは難しそうですが、適切に設定したカメラで撮影することで、ぼんやりとした姿や少々伸びた尾の様子を写すことができそうです。

4月下旬以降は位置が悪く、日本からの観察が難しくなります。5月上旬から中旬にかけて、夕方の超低空で観察できるチャンスがありますが、太陽からも地球からも離れて暗くなっていく頃で、観察は簡単ではないでしょう。

  • (注1)彗星は、氷(水、一酸化炭素、二酸化炭素などが凍ったもの)と塵(ちり、ダストとも言う)が混じった天体です。彗星が太陽に近づき、太陽の熱によって氷がガス(気体)になる(昇華する)ときに、ガス自体やダストが彗星から放出されます。このような一連の現象を彗星活動と言います。一般的に太陽に近づくほど彗星活動は活発になり、明るくなります。

パンスターズ彗星の見える位置と明るさ

パンスターズ彗星は、星空の中を日々移動していくため、観察する日により位置が変わっていきます。また明るさも日々変化していきます(位置は東京の場合)。

4月11日から4月17日頃(明け方の低空)

この時期のパンスターズ彗星は、低い空に位置しますが、日の出前の明け方に東から東北東の空で観察することができます。太陽にも地球にも近づいていくことで、約5等から約4等(予想、以下同じ)へとその明るさを増していきます。一般に6等よりも明るければ肉眼で見える明るさ(注2)ですが(十分に暗い空の場合)、彗星の位置する低空は、薄明が影響したり、また地上の明かりやもやなどの影響を受けたりして、この時期の肉眼での観察は難しそうです。望遠鏡や双眼鏡を使うと見える可能性が高くなりますが、それでも簡単ではないでしょう。

なお、適切な設定をしたカメラでは、ぼんやりとした彗星の姿を写し出すことができそうです。ただし、望遠レンズが必要となるかもしれません。

また、尾も少しずつ伸びてくる時期でもあります。彗星の尾にはイオンの尾(ガスの尾)とダストの尾(塵の尾)の2種類があり、4月上旬にはイオンの尾が写真によく写るようになっていました。ただしイオンの尾は淡いため、肉眼で観察することはかなり難しいでしょう。双眼鏡や望遠鏡を使っても、見えづらいことが予想されます。

  • (注2)彗星はぼんやりと見える天体です。彗星の明るさは、ぼんやりと広がった光を集めた全体の光量で等級を表すため、点状に光る恒星の明るさとは性質が少々異なります。同じ明るさの恒星と比較すると、特に空の条件が悪いときには極端に見えづらくなります。
表1 パンスターズ彗星の位置と明るさ(日の出1時間前、東京の場合)
日付時刻方位と地平高度明るさ
4月11日4時14分東 19度5~5.5等
4月12日4時13分東北東 19度5~5.5等
4月13日4時12分東北東 18度4.5~5等
4月14日4時10分東北東 17度4.5~5等
4月15日4時09分東北東 16度4~5等
4月16日4時08分東北東 15度4~5等
4月17日4時06分東北東 13度4~4.5等

※明るさは予想等級です。彗星の状況により、これより明るくなる場合や暗くなる場合があります。

4月18日から4月22日頃(明け方の超低空)

この時期の彗星は、4月19日に近日点を通過し、彗星活動が最も活発になる頃です。しかしながら、位置が非常に低い空になるため、観察は徐々に難しくなっていきます。もしも彗星が見つからない場合には、表2の時刻より少しだけ後の時間帯で、彗星の位置が少し高くなるのを待って観察する必要があるかもしれません。一方で、時間とともに薄明や朝焼けが明るくなりますので、観察するタイミングも難しくなるでしょう。

彗星の位置はとても低く、東北東の方向が地平線近くまで開けた場所での観察が必要となります。彗星の明るさは、約4等から3等程へと増していきます。よく晴れた空の澄んだ日に暗い場所で観察した場合には、かすかにぼんやりとした彗星の姿が肉眼で見える可能性があります。肉眼で見えづらい場合には、双眼鏡や望遠鏡を使えば観察しやすくなるでしょう。双眼鏡で見えた後に改めて肉眼で探してみると、彗星が見えるようになることもあります。一方、超低空では、もやや地上の光の影響を受けやすいため、彗星自体が明るくなっていても高度が低くなることの影響で見つからないこともあるでしょう。

適切な設定をしたカメラでは、彗星の姿を撮影することができそうです。露出時間などを調整しながら撮影してみましょう。また、彗星の尾がさらに伸びることも期待され、特に写真には写りやすくなるでしょう。尾の長さは予想しづらいのですが、写り具合などを見ながら、構図を工夫すると良いでしょう。また尾が短い場合には望遠レンズを使うなどして、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ダストの尾が伸びた場合には、双眼鏡でその尾の様子を観察できるかもしれません。ただし彗星本体よりは淡いため、やはり低空のもやなどにまぎれてしまうかもしれません。注意深く観察してください。

表2 パンスターズ彗星の位置と明るさ(日の出1時間前、東京の場合)
日付時刻方位と地平高度明るさ
4月18日4時05分東北東 11度3.5~4.5等
4月19日4時04分東北東 9度3.5~4.5等
4月20日4時03分東北東 7度3.5~4.5等
4月21日4時01分東北東 4度3~4等
4月22日4時00分東北東 1度3~4等

※明るさは予想等級です。彗星の状況により、これより明るくなる場合や暗くなる場合があります。

パンスターズ彗星の基本情報

パンスターズ彗星は、2025年9月8日(日本時・世界時とも)にハワイのマウイ島にあるPan-STARRS2望遠鏡による観測(注3)で発見されました。2025年9月前半に発見された彗星のうち3番目の彗星であることからC/2025 R3の符号が付与され、PANSTARRS(パンスターズ)彗星と命名されました。なおこの観測システムで発見された彗星は多数あり、数多くのパンスターズ彗星が存在しますので注意が必要です。正式には「C/2025 R3 (PANSTARRS)」と表記されます。

彗星の軌道は、元々は放物線にごく近い楕円(だえん)軌道を描いていて、計算上では、前回は約18万年前に太陽に近づいたと考えられます。現在の軌道は、惑星の引力の影響(注4)で放物線にごく近い双曲線軌道に変化していて、将来的には太陽系から離れ二度と戻らないと考えられます。

  • (注3)Pan-STARRSは、「Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System」(広域掃天望遠鏡・高速応答システム)の略で、ハワイ・マウイ島のハレアカラにある2台の望遠鏡(Pan-STARRS1およびPan-STARRS2)により、移動天体や変光天体などの観測・発見が行われています。
  • (注4)このような軌道の変化を摂動(せつどう)と呼びます。

彗星の色について

彗星には、おもに緑色に光る成分と白色に見える成分があり、それらが混じった色として観察されます。緑色は、彗星に含まれる炭素を含む分子が分解して生じた生成物が発光しているもので、白色は、彗星から放出された塵(ダスト)が太陽光を反射して見えるものです。成分量の違いで色が異なりますし、また太陽との距離によって彗星活動が変わり、色が変化することもあります。

また、ダストの尾は、太陽光の反射によって白っぽく見えますが、イオンの尾は彗星から放出された成分が電離して生じたイオンにより、青っぽく光ります。

彗星を写真に撮影した場合には、淡い光を蓄えることができますので、見た目以上に色鮮やかに写し出すことができます(ただし、設定や、撮影後の処理によって、色のバランス(ホワイトバランス)がずれてしまうこともありますので、正確な色かどうかは判断が難しい場合もあります)。一方、人の目は、彗星のような暗い天体には色を感じにくくなります。双眼鏡や望遠鏡を通して見た場合でも、ほのかに色が付いて見える程度です。とくにイオンの尾の青い色は見えづらく、尾そのものを見ることも難しいものです。

このような彗星の色にも注目しながら、彗星の観察にのぞんでみてはいかがでしょうか。

パンスターズ彗星の画像

2026年4月8日に東京都多摩市で撮影したパンスターズ彗星(C/2025 R3)
2026年4月8日に東京都多摩市で撮影したパンスターズ彗星(C/2025 R3)。市販のスマート望遠鏡(口径5cm)にて撮影。画像は強調処理済み。(クレジット:佐藤幹哉)
画像:中解像度(1080 x 1920)

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