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「GALAXY CRUISE」2023特別キャンペーンで答え合わせのできる銀河を分類しよう

本キャンペーンに登場する銀河画像
本キャンペーンに登場する銀河画像。楕円銀河(左2点)と渦巻銀河(右2点)でシミュレーション銀河とすばる望遠鏡が撮影した本物の銀河を並べているが、どちらが本物か区別がつかない。(クレジット:Bottrell et al./The TNG collaboration/HSC-SSP/NAOJ)

銀河はどのように生まれて、どのように進化(成長)するのでしょうか。宇宙にはなぜ、丸くてはっきりした構造がない楕円銀河(だえんぎんが)から、円盤と渦巻き構造を持つ渦巻銀河(うずまきぎんが)まで多種多様な形の銀河が存在するのでしょうか。すばる望遠鏡が捉えた広大な宇宙画像の中を「航海」しながら、市民が銀河の研究に参加する「GALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)」。2023年9月12日午前9時より、すばる望遠鏡で得られた「本物の銀河」そっくりのシミュレーション銀河を分類する、2023特別キャンペーンが始まります。

2023特別キャンペーンについて

特別キャンペーンでは、「銀河進化モデル」を用いてコンピュータの中に再現したシミュレーション銀河を、市民天文学者の皆様に分類いただきます。シミュレーション銀河はドイツと米国の研究チームによるイラストリスTNG(IllustrisTNG、以下TNG)プロジェクトの画像を使用します。TNGの特徴は、宇宙の広い領域を扱い、かつ、高い解像度で銀河の構造を精密に再現していることで、近年世界中で研究に用いられています。

「すばる望遠鏡の画像を分類しているGALAXY CRUISEと比較するには、TNGが最適でしょう。シミュレーション結果をHSCの画質に合わせて画像化する作業にはかなりの手間がかかりますが、TNGの結果とHSC画像の比較研究を行っている共同研究者が、画像を提供してくれたおかげで、このキャンペーンが実現しました」とGALAXY CRUISEサイエンスチームで、本キャンペーンをリードする東京大学の安藤誠(あんどう まこと)日本学術振興会特別研究員は語ります。

キャンペーンでは、シミュレーション銀河とすばる望遠鏡HSCが捉えた本物の銀河を混ぜ込んだ7000以上の画像を分類します。

「シミュレーション画像だという先入観をなくすために、本物のHSC画像も混ぜています。見た目で区別できないので、全てすばる望遠鏡が捉えた本物の銀河だと思って分類してください」と同チームで東京大学の伊藤慧(いとう けい)日本学術振興会特別研究員は、本キャンペーンの特徴を語ります。

キャンペーンの意義

銀河天文学におけるシミュレーションとは、銀河の誕生や成長のレシピを組み込んだ「銀河進化モデル」を用いてコンピュータの中に宇宙を再現し、銀河の成長を調べる実験的手法です。宇宙で起こる天体現象のほとんどは直接実験室で確かめることができないため、コンピュータの中に再現した「模擬宇宙」を観測データと比較することが、現象の理解に必要です。

「研究の両輪である観測データとシミュレーションデータの比較を、ずっと行いたいと思っていました。シミュレーション画像を市民天文学者の皆様に分類いただくことで、銀河進化への理解を深められると確信しています」と「船長」こと国立天文台ハワイ観測所の田中賢幸(たなか まさゆき)准教授はこのキャンペーンに期待をよせています。

GALAXY CRUISEでは、市民天文学者が銀河の形態や、衝突の有無を分類した結果が蓄積されてきています。この分類結果とAI(人工知能)による機械学習を組み合わせるなど、新たな研究への発展も見せています。その一方で、衝突の有無の判断が大きく分かれるような、科学解析を行う上で扱いの難しい銀河が多数混ざっています。市民天文学者の何割が「衝突している」と判定すれば、衝突銀河と扱えるのか、その正解を誰も知りません。

「GALAXY CRUISEで何千個と銀河を分類された常連の方からも、私の分類結果はあっているのでしょうか、と尋ねられることがありますが、シミュレーション銀河は正解がわかっているのが特徴です。キャンペーンが完了したら、ユーザー登録されたどなたでも答え合わせができるコースを設ける予定です。ふるってご参加ください」(田中准教授)。

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