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王者の惑星を観望する―シリーズ・季節の天体 2026年3月
国立天文台三鷹では、定例観望会を開催しています。このシリーズでは、2025年度の定例観望会で取り上げた天体をピックアップして、それぞれの季節ならではの宇宙の見どころをご紹介してきました。
冬の夜空を圧して輝いた惑星の“王者”
多くの1等星、2等星が見られ、一年のうちで最もきらびやかに感じられた冬の星たちが、夕方の空から退場していく季節になりました。その中で、かのシリウスすらもかすませるほどの圧倒的な明るさで、一つの惑星がなお高い位置に輝いています。木星です。太陽系の惑星のヨーロッパ語系の名称は、ローマ神話の神々に由来して名付けられていますが、木星(英語ならばJupiter)は神々の首座に座るユピテルが語源。まさに“王者”然とした輝きと言えましょう。 2026年2月から3月にかけては、定例観望会でも木星をターゲットに取り上げました。
木星の見どころ(1) 大気と自転が生み出す模様
2月13日のオンライン定例観望会は晴天に恵まれ、口径50センチの望遠鏡で木星の姿を見ることができました。木星の大気に見られる象徴的な縞(しま)模様は、木星の自転が生み出す東西方向の強力な気流によって現れています。上昇気流と下降気流の領域で、化学的状態が異なり色の違いを生んでいるようです。もう一つの特徴的現象が「大赤斑(だいせきはん)」。高速の自転が生み出す大気の渦です。
木星の見どころ(2) ガリレオも見た衛星たち
最近も、木星の周囲を公転する衛星が新たに発見されました(新天体関連情報>惑星の衛星数・衛星一覧 )。ついに100個の大台に乗ったうち、最も大きな4つの衛星は、口径の小さな望遠鏡でも簡単に見ることができ、発見者にちなんで「ガリレオ衛星」と呼ばれます。エウロパ、ガニメデ、カリストの3衛星は表面を水の氷床で覆われ、その下に液体の内部海があると考えられています。このような氷衛星は、地球以外で生命の居住可能性がある環境として注目が高まっており、NASAのエウロパ・クリッパー(2024年打ち上げ)とESAのJUICE(同2023年)が続けて探査に向かっています。後者に搭載された機器の開発には、国立天文台も参加しています。将来の成果に期待しています。
(参照リンク)JUICE打ち上げ成功!レーザ高度計「GALA」の開発参加を経て(広報ブログ 2023年5月23日)
天体の観察から物理法則を解き明かす
天体望遠鏡の登場でガリレオ衛星が発見されたちょうど同じ時代に、惑星運動が従う「ケプラーの法則」が見出されました。観測される天体の動きを決めている「万有引力の法則」をニュートンが導き出し、それが後に海王星の発見を導いたことは、このブログの記事でもご紹介しました。この万有引力の法則でも説明できなかった水星の運動をついに正しく示したのが、重力と時空の関係を記述した「一般相対性理論」です。一般相対性理論は、ブラックホールや宇宙膨張など、その後人類を悩ませ惹(ひ)き付ける多くの謎を突き付けることにもなりました。
2026年3月28日、2025年度最後の定例観望会で解説を務めたのは、宇宙論の研究で博士号を取得したばかりの大学院生でした。木星の衛星の動きを夜ごとに記録したガリレイから、宇宙膨張を加速させる暗黒エネルギーを突き止める最先端の研究まで、天体の様子を観察することでこの世の基礎的な物理法則を解き明かす営みが続いてきたのです。
国立天文台三鷹の定例観望会ではこれからも、天体の姿を美しく感じる気持ち、不思議と思う知的好奇心を育むとともに、宇宙を通して世界の根本的な成り立ちを解き明かそうとする天文学ひいては科学の営みに触れる機会を提供し続けていきたいと思います。
定例観望会について
国立天文台三鷹では、天体望遠鏡を通して季節ごとに楽しめる天体を見ながら、遠い天体の素顔を学ぶ「定例観望会」を開催しています。2026年度は、基本的に奇数月に1回、実際に望遠鏡をのぞいて、あるいは画面に映し出された映像で観望する現地開催(定員・事前申し込み)とオンライン開催のスタイルを取り合わせて開催予定です。