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JUICE打ち上げ成功!レーザ高度計「GALA」の開発参加を経て

2023年4月14日、南米の仏領ギアナ、クールーにあるギアナ宇宙センターから見事木星系へと旅立った木星氷衛星探査機「JUICE(ジュース)」。その搭載機器の一つに、国立天文台RISE月惑星探査プロジェクトも開発に参加したレーザ高度計「GALA(Ganymede Laser altimeter)」があります(注1) 。なお、この打ち上げ直前の3月1日から3日には、ドイツ航空宇宙センターで開かれたJUICE-GALAチームミーティングでコロナ禍で長く直接会う機会のなかったメンバーと再会し、今後について議論しました。詳しくは別の記事(注2)に書きましたのでご一読いただければ幸いです。

2023年4月14日に無事に打ち上げられた、JUICE探査機を搭載したアリアン5ロケット
2023年4月14日に無事に打ち上げられた、JUICE探査機を搭載したアリアン5ロケット。(提供:Hussmann氏)

最近では民間の宇宙探査も多くなりましたが、機器開発に関わった衛星の打ち上げはやはり気になり、4月13、14日は9時頃にスマホのニュースをチェックしていました。現地は雷が多い季節らしく打ち上げが延び延びになる可能性もありましたが、打ち上げウィンドウ2日目で無事に打ち上がりひと安心しています。この打ち上げ成功で燃料の消費が最小限で済み、ガニメデ周回軌道低高度オプション(高度200キロメートル)の可能性が増え、関係者一同気を良くしているところです。さらに運用期間の5月15日、GALAの機能がすべて正常であることが確認され,一同ますます意気上がる状況です。

GALA光学ユニット
GALA光学ユニット(クレジット:HENSOLDT)

GALAはいわゆるレーザ測距計で、レーザパルスを目標に出射してから反射パルスを受光するまでの時間を測定して、距離に換算します。日本でも月周回衛星「かぐや」や、「はやぶさ」、「はやぶさ2」で実績があり、2024年度打ち上げ予定の火星衛星探査機「MMX」にも搭載されます。GALAの開発はドイツ宇宙センターのHauke Hussmann氏率いる惑星測地系のグループが中心になり、ドイツ、日本、スイス、スペインの4か国の国際協力で行われました。日本側の中心はJAXAの塩谷圭吾氏、受光素子(APD)および電子制御系は千葉工業大学 惑星探査研究センターの小林正規氏が担当しました。RISEは受光素子の温度制御に必要な電力の実測データの取得、受光部の排熱に使われるサーマルストラップの柔軟性試験などいくつかの実験で協力したほか、受光素子の放射線劣化(特に木星周回時)がGALAの測距精度と誤測距確率に与える影響を数値モデル で評価しました(注3)

ドイツ航空宇宙センターにおける日本担当モジュールのインターフェース試験風景
ドイツ航空宇宙センターにおける日本担当モジュールのインターフェース試験風景。(出典:日本惑星科学会誌2020年29巻3号)

打ち上げ後のJUICEは4回地球に、1回金星に接近し重力を利用して加速されます。それでも木星系到着まで8年かかります。その後3年間木星を周回しつつガリレオ衛星のエウロパ、ガニメデ、カリストに何度も接近してフライバイ観測を行い、最終的に11年後の2034年にガニメデの周回観測を開始します(注4) 。ガニメデの形状は木星の巨大な潮汐作用で周期的にゆがんでいると予想されており、GALAのデータはその様相を世界で初めて明らかにすると期待されています。さらに、存在が予測されているガニメデ内部の海について、深さや規模を含めその存在を世界で初めて実証することも期待されています。

JUICEは打ち上げ後から到着までが非常に長いので、事業の継続性のため運用やサイエンスに関心を持つ若い方々へと世代交代していかなければなりません。私もJUICEが木星系に到着する2031年には退職しているはずですが、引き続き協力していきたいと思います。

文:荒木博志(国立天文台 RISE月惑星探査プロジェクト)

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