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2024年9月の星空情報

著者近影内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)

2024年9月の星空情報です。

秋分を控え、暦は秋の半ばに差しかかります。17日は「中秋」。陰暦(太陰太陽暦)の八月十五日に当たる日です。古くから愛される十五夜の名月を楽しみましょう。

中秋の名月のそばで輝く土星は、8日に「衝」(注)となり、観察の好機を迎えています。望遠鏡で見ると、今年は土星の環がとても細く見えます。土星は自転軸を傾けて公転しており、地球から見える環の傾きが変化するのです。環はどんどん細くなっていき、2025年3月24日に「環の消失」が起こります。真横から環を見る位置になるため、環が消えたように見えるのです。

未明の空では、昇ってきた冬の星座に明るい木星と火星が加わってにぎやかです。月との接近も目を引くでしょう。

  • (注)太陽系の天体が、地球から見て太陽と正反対を通過する瞬間。衝の頃の惑星は真夜中に南中し、一晩中空に見える上、地球との距離が近く見かけの大きさ(視直径)が大きい、太陽光を前面から受けて影がなく光度が明るいなど、観察しやすい条件になっている。

9月の月の暦

3日:新月 11日:上弦 18日:満月 25日:下弦
「中秋の名月」の翌日、18日に満月となります。

ワンポイント・アドバイス

9月8日に「衝」を迎え、見頃となる土星。代名詞ともいえる「環」の見え方に注目しましょう。

土星の自転軸が傾いているため、地球から見える環は年によって傾きが変化して見えます。真横から見る2025年に向かって、現在は環の開き方がかなり小さくなっています。

氷や岩石の小さな粒子の集まりである土星の環の厚みは、せいぜい1キロメートル、薄いところでは数十メートル以下とも言われます。約15年に一度、きわめて薄い環を真横から見る時期には、一時的に見えなくなることもあります。これを「環の消失」現象と呼びます。当然ながら、環が実際になくなるわけではなく、見えない位置関係になるのです。

2025年の3月、2009年以来に地球から土星の環を真横から見る「環の消失」が起こります。5月には太陽の光が真横から環に当たるタイミングで再び見えなくなります。ただし土星が見かけ上太陽方向に近いため、実際にこの現象を観察するのは極めて困難です。今秋から今冬にかけて土星の見えるシーズンに、観望会などのチャンスに見てみてください。環というよりも細い棒が突き出したように見える姿は、土星のイメージを変えてくれるかもしれません。

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