すばる望遠鏡が観た宇宙の姿 ―すばる望遠鏡20年の研究成果―すばる望遠鏡が観た宇宙の姿 ―すばる望遠鏡20年の研究成果―

TOPIC 01
星間物質の華麗な世界

すばる望遠鏡は、ファーストライト後の試験調整期間の間に、早くもその優れた性能を発揮した。最も初期から運用を開始した近赤外線観測装置CISCOは、星間に漂ういくつかの電離ガス雲の観測において、すばる望遠鏡の赤外線観測性能を見せつけた。オリオン大星雲の赤外線画像は、その鮮明さにおいて、すばる望遠鏡の華々しいデビューを印象付けるものであった。

  • [ウェブリリース]オリオン星雲
  • [参考文献]Kaifu et al., 2000, PASJ, 5, 1, “The First Light of the Subaru Telescope: A New Infrared Image of the Orion Nebula”
オリオン大星雲の赤外線画像
オリオン大星雲の赤外線画像。CISCO撮影。トラペジウムが放つ強力な紫外線によって電離されたガスが、視野全体にわたって青く淡く輝いている。(クレジット:国立天文台)

また、共同利用開始直後に撮られた星形成領域S106の美しい赤外線画像も、見るものに強烈な印象を与えた。この画像からは、600を超える生まれたての星が検出され、その空間分布から、質量の重い星ほど星雲の中心付近で生まれるという傾向が明らかになった。

星形成領域S106 IRS4の赤外線画像
星形成領域S106 IRS4の赤外線画像。CISCO撮影。宇宙の不思議さ、美しさを象徴する天体として、米国のアル・ゴア元副大統領の著書・映画『不都合な真実』に取り上げられた。(クレジット:国立天文台)

さらにすばる望遠鏡は、近赤外線分光撮像装置IRCSと冷却中間赤外線分光撮像装置COMICSによって、星雲M17で生まれた若い星の周囲に広がる星間ガスの複雑な多重構造を暴き出した。生まれたばかりの星へのガスの流入メカニズムを探る貴重な観測結果である。

原始星M17-SO1の赤外線画像
原始星M17-SO1の赤外線画像。IRCS+AO撮影。原始星を覆うガスと塵(ちり)の雲(エンベロープ)の姿が、シルエットとして鮮明に捉えられている。(クレジット:国立天文台)