すばる望遠鏡が観た宇宙の姿 ―すばる望遠鏡20年の研究成果―すばる望遠鏡が観た宇宙の姿 ―すばる望遠鏡20年の研究成果―

TOPIC 02
すばる高解像度観測能力の進化 ―惑星形成、系外惑星、重力レンズ―

補償光学装置(AO)を備えたすばる望遠鏡は、高解像赤外線観測に威力を発揮し、若い星の周りに広がる、惑星の元となるガス雲―原始惑星系円盤―の研究に活躍した。AOにコロナグラフ撮像装置CIAOの組み合わせは、若い恒星AB Aur(ぎょしゃ座AB星)の周囲に原始惑星系円盤が渦を巻いて分布している様子を明らかにした。これは原始惑星系円盤撮像の先駆的な観測成果である。

若い恒星AB Aur(ぎょしゃ座AB星)の原始惑星系円盤の赤外線画像
若い恒星AB Aur(ぎょしゃ座AB星)の原始惑星系円盤の赤外線画像。CIAO+AO撮影。惑星誕生の現場の一つが、まるで銀河のように渦巻き状の複雑な構造をしていることが明らかになった。(クレジット:国立天文台)

さらには、若い連星系の原始惑星系円盤の詳細構造を見ることにも成功し、理論計算との詳しい比較から、惑星形成過程での外部からの物質供給の様子を世界で初めて明らかにした。

若い連星系SR24にある原始惑星系円盤の赤外線画像
若い連星系SR24にある原始惑星系円盤の赤外線画像。CIAO+AO撮影の画像(左)(クレジット:総合研究大学院大学/国立天文台)と理論計算結果(右)(クレジット:千葉大学)。連星系を取り巻く円盤の複雑な構造を直接写し出した。

すばる望遠鏡の高解像度観測路線は、さらに進化したコロナグラフ撮像装置HiCIAOの登場によって、新たな展開を迎え、ついに太陽系外惑星を直接撮像することに成功した。太陽型恒星GJ 504の周囲を巡るGJ 504bは、それまで直接撮像された太陽系外惑星の中で最も暗く温度が低いもので、「第二の木星」と言って良い。

太陽系外惑星GJ 504 bの赤外線画像
太陽系外惑星GJ 504 bの赤外線画像。HiCIAO+AO撮影。直接撮像された太陽系外惑星の中で最も暗く温度が低く、「第二の木星」と呼ぶにふさわしい天体とされる。(クレジット:国立天文台)

すばる望遠鏡の補償光学システムはさらに進化し、レーザーガイド星による大気揺らぎ補正が実現した。レーザーガイド星を用いると、大気揺らぎ補正に使える明るい星が無い天域でも、AO観測ができる。この機能により、重力レンズ効果を受けたクエーサー像の観測を行い、重力レンズを起こしている銀河を検出することに成功した。レーザーガイド星AOはその後も銀河などの高解像度観測において活躍している。

二重クエーサー天体SDSS J1334+3315の赤外線画像
二重クエーサー天体SDSS J1334+3315の赤外線画像。レーザーガイド星AOを用いた観測。重力レンズ効果を起こしている銀河を二つのクエーサー像の間に検出した。(クレジット:国立天文台)