すばる望遠鏡が観た宇宙の姿 ―すばる望遠鏡20年の研究成果―すばる望遠鏡が観た宇宙の姿 ―すばる望遠鏡20年の研究成果―

TOPIC 07
身近な最前線 ―私たちの太陽系

太陽系は、身近にありながら今なお多くの謎に包まれている。彗星(すいせい)は、太陽系誕生時の記憶を留める始原天体のひとつであると考えられている。彗星の内部構造を探るため、NASAはディープインパクト探査機をテンペル第1彗星に衝突させた。その衝突の瞬間が、すばる望遠鏡に搭載された冷却中間赤外線分光撮像装置COMICSによって中間赤外線で観測された。この観測により、衝突によって噴出した内部物質の組成が明らかとなったのである。

ディープインパクト探査機衝突直後のテンペル第1彗星の赤外線画像
ディープインパクト探査機衝突直後のテンペル第1彗星の赤外線画像。COMICS撮影。彗星内部物質が宇宙空間に広がる様子を、衝突後数時間に渡って克明に捉えた。(クレジット:国立天文台)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」は、7年以上の苦難の旅を経て、小惑星イトカワに着陸し、その表面物質を地球に持ち帰った。はやぶさが地球に帰還する直前の姿はすばる望遠鏡主焦点カメラSuprime-Cam(シュプリーム・カム)によって捉えられた。はやぶさの持ち帰った貴重なサンプルは、小惑星研究を大いに進めることとなった。この偉大な探査機の最後の姿を捉えた画像をもって、本小文の締めとしよう。

地球帰還直前の小惑星探査機「はやぶさ」の可視光画像
地球帰還直前の小惑星探査機「はやぶさ」の可視光画像。Suprime-Cam 撮影。縦長の形をしているCCDの向きを調整し、移動する「はやぶさ」を一つの視野に収めた、こだわりの観測だ。