188cm反射望遠鏡とは
188cm反射望遠鏡は、岡山県浅口市・小田郡矢掛町の境界上に設置された国内最大級の口径を持つ光学赤外線望遠鏡です。1960年に岡山天体物理観測所(現・ハワイ観測所岡山分室)が開所した当時は世界第7位の口径を誇り、東洋一の大きさの反射望遠鏡と言われました。日本にある望遠鏡として初めて太陽系外惑星を発見するなど、半世紀以上にわたって日本の光学赤外線天文学の主要装置として活躍してきました。2018年からは東京科学大学・浅口市・国立天文台の三者間の協定に基づいて運用されています。望遠鏡建造から60年以上を経た現在も太陽系外惑星の探索を中心とした最先端の科学研究に使われるとともに、一般向けの眼視観望会も浅口市によって定期的に開催されています。

研究
現在、188cm反射望遠鏡は主に太陽系外惑星の探索を目的とした観測に使用されています。主力観測装置としては、可視域の高分散分光装置と三色同時測光カメラがあり、それぞれ異なる手法で系外惑星の観測を行っています。前者では系外惑星の視線速度モニターを、後者ではトランジット観測を実施しています。また、量子技術を用いた超精密波長較正基準となる「天文コム」の開発など、先進的な装置開発も進められています。
これらの観測装置の開発には全国の大学の研究者や大学院生が携わり、光学赤外線天文学分野における多くの開発研究者の育成に貢献しました。また、国内でアクセスしやすく、比較的観測時間を確保しやすい望遠鏡であることから、大規模プロジェクトへの活用もしやすいという利点があります。こうした特性により、188cm反射望遠鏡は若手研究者の教育・育成においても重要な役割を果たしています。
スペック
所在地 | 岡山県浅口市鴨方町本庄 |
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製造 | グラブ・パーソンズ社(イギリス) |
主鏡有効直径 | 188センチメートル |
主鏡焦点距離 | 915センチメートル |
本体重量 | 50トン |
光学系 | クラシカル・カセグレン |
観測波長域 | 0.36~2.5マイクロメートル |
主な観測装置 | 高分散エシェル分光器 HIDES(HIgh Dispersion Echelle Spectrograph) 近赤線外分光撮像装置 ISLE(Infrared Imager/Spectrograph for the OAO 188cm Telescope) 可視光低分散分光撮像装置 KOOLS(Kyoto Okayama Optical Low-dispersion Spectrograph) MuSCAT (Multi-color Simultaneous Camera for studying Atmospheres of Transiting exoplanets) |
特徴 | ニュートン焦点、カセグレン焦点、クーデ焦点の3つの焦点を持ち、観測目的により観測機器、副鏡の交換を行う。 |
歴史
1953年(昭和28年) | 学術会議より大望遠鏡の設置を政府に要求 |
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1960年(昭和35年)10月19日 | 開所式挙行。予備観測開始 |
1994年(平成6年) | OASIS観測開始(シューメーカー・レビー第9彗星の木星衝突の近赤外線観測) |
2000年(平成12年) | HIDES運用開始(本格的高分散分光観測) |
2006年(平成18年) | ISLE共同利用開始 |
2008年(平成20年) | KOOLS共同利用開始 |
2014年(平成26年) | MuSCATファーストライト |
2017年(平成29年)12月 | 共同利用停止 |