• 研究成果

気球観測Sunrise-IIIで太陽磁場の素顔に迫る

今回の観測で捉えられた静穏領域の上空にある磁場と、数値シミュレーションで再現された磁場構造
今回の観測で捉えられた静穏領域の上空にある磁場(右の正方形)と、数値シミュレーションで再現された磁場構造(左の正方形)。観測が捉えた細い糸のような磁場構造が、数値シミュレーションではねじれた磁力線(左下の円内の拡大図)として再現されています。(クレジット:NAOJ / MPS / Sunrise-III/SCIP) 画像(1.3MB)

国際共同太陽観測プロジェクトSunrise-IIIで、国立天文台が主導して開発した観測装置が重要な活躍を見せました。太陽表面の大部分を占める静穏領域の上空に、従来の想定を超える入り組んだ磁場の構造が潜んでいることが明らかになりました。

太陽の表面は、磁場が強い領域である黒点と、黒点よりも磁場が弱い静穏領域に大別されます。静穏領域にも無数の小さな磁場構造が存在し、さらにその上空にあたる彩層にも磁場が存在します。しかしその磁場は弱く、地上望遠鏡では大気のゆらぎが影響するため静穏領域の彩層磁場は測定が困難でした。

口径1メートルの望遠鏡を、高度35キロメートルの成層圏を飛翔する気球に搭載して太陽を観測する国際共同観測プロジェクトでは、2009年と2013年に続き、2024年7月に3回目となるフライト観測Sunrise-IIIを実施しました。この高度では、大気の影響をほとんど受けずに太陽を観測することができます。気球のゴンドラには、各国が開発した3つの観測機器が搭載されました。中でも国立天文台が主導して開発した近赤外線偏光分光装置SCIP(Sunrise Chromospheric Infrared spectroPolarimeter)は、太陽表面から彩層にかけての磁場を切れ目なく観測できます。

この領域には、太陽表面で集中した磁場が上空の彩層へ広がり、周囲を覆うように形成される「キャノピー」と呼ばれる構造があります。観測で得られたデータを詳細に分析した結果、キャノピーの内部に、細く伸びる糸状の磁場構造が存在することが発見されました。さらに、数値シミュレーションにより、観測された糸状の磁場構造が、太陽表面の運動によってねじられた磁力線によって形成されることが明らかになりました。一方、太陽の縁にある静穏領域を横から見た観測では、太陽表面から上空へ伸びるジェット状構造「スピキュール」の磁場を捉え、その分布が高さとともに変化することを明らかにしました。

成層圏からの高精度の観測により、彩層磁場の構造を精密に描き出すことに成功しました。これらの成果は、太陽表面から上空へエネルギーがどのように運ばれ、彩層やコロナの加熱につながるのかを解明するための重要な手掛かりとなります。

詳細記事

太陽観測科学プロジェクト

このページをシェアする