- 研究成果
アルマ望遠鏡、惑星誕生の現場をピンポイントで特定
アルマ望遠鏡を用いた観測により、若い星を取り巻く原始惑星系円盤の中に、周囲より電波を強く放つ小さな場所を発見しました。惑星が今まさに形成されている現場をピンポイントで特定した、たいへん意義深く新たな知見です。
惑星は、若い恒星を取り巻く塵(ちり)とガスの円盤(原始惑星系円盤)の中で生まれると考えられています。しかし、惑星がどのように周囲の物質を取り込んで成長していくかといった、惑星の誕生と成長過程の詳細には未解明の点が多く残されています。
国立天文台の塚越崇(つかごし たかし)特任助教らの研究チームは、惑星誕生の詳細な過程を調べるため、アルマ望遠鏡を使って若い星「うみへび座TW星」を観測しました。年齢がおよそ1000万歳のうみへび座TW星は地球から194光年の距離にあり、若い恒星の中では太陽系に最も近い天体です。過去の観測で、うみへび座TW星の周囲には原始惑星系円盤が存在し、その円盤は複数の隙間を持つ構造をしていることが分かっていました。研究チームは、従来よりも約3倍高い感度で観測をした結果、この原始惑星系円盤の中に、これまで見つかっていなかった、周囲より電波を強く放つ小さな場所を一つだけ見つけたのです。
研究グループは、この場所が、(1)すでに形成されつつある海王星サイズの惑星を取り巻く「周惑星円盤」、(2)円盤内で生まれたガスの渦にたまった塵で、今後惑星になり得る構造、のいずれかであると考えています。いずれの場合も円盤内で惑星が成長していく重要な現場を見ていることになり、惑星形成の過程を理解する重要な観測成果です。
この観測成果は、T. Tsukagoshi et al. “Discovery of an au-scale excess in millimeter emission from the protoplanetary disk around TW Hya”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に2019年6月10日付で掲載されました。