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星のゆりかごを観望する―シリーズ・季節の天体 2026年1月

著者近影内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)

50センチ公開望遠鏡で撮影したオリオン大星雲(M42)
50センチ公開望遠鏡で撮影したオリオン大星雲(M42)。実際に眼で観望すると、ここまで広がった淡い構造は見られない。星雲の明るい中央部で一塊に見えている光点は、4つの若い恒星の集団「トラペジウム」。(クレジット:国立天文台) 画像(5.6MB)

国立天文台三鷹では、毎月定例観望会を開催しています。このシリーズでは、定例観望会で取り上げた天体をピックアップして、それぞれの季節ならではの宇宙の見どころをご紹介します。

オリオン座のシーズン最後の勇姿

早春の候、日が暮れた空では南正面に高く上ったオリオン座が目に入ります。その中に、天文学的にもとても興味深い天体「オリオン大星雲(M42)」があります。2つの1等星と、中心に「三つ星(みつぼし)」が並ぶ姿は都会でも見つけやすく、空が暗い場所であれば星雲の位置もたどることができます。過去のほしぞら情報「オリオン大星雲を観察する好機(2023年2月)」をご参照ください。

冬の象徴として親しまれてきたオリオン座も、夜が更けると西の空に大きく傾くようになりました。2026年1月24日の定例観望会では、見納めの季節に入ったこのオリオン大星雲を観望しました。

星雲を輝かせる若い星々

星雲の全体像を撮影すると、翼を広げた鳥のようにも見えるオリオン大星雲は、赤い光を放つガス(輝線星雲)や、それを背景に黒々と浮かび上がる暗黒星雲が複雑に入り混じっています。特に明るい星雲の中心部分に、「オリオン座θ1」と呼ばれる天体があります。かつては単独の恒星として認識されていたことを物語る名称ですが、50センチ公開望遠鏡で拡大してみると、4つの明るい恒星が密集しており、「トラペジウム」として知られています。これらはどれも生まれてから数百万年と恒星としては非常に若く、太陽の10倍以上の質量を持つ巨大な星です。スペクトル型がO型で4万度もの表面温度を持つC星を中心に、高温の大質量星たちが放射する強い紫外線が周囲のガスを加熱しており、この星団こそがオリオン大星雲を輝かせているエネルギー源です。

壮大な星のゆりかご

恒星は、分子ガスと塵(ちり、固体微粒子)が集まった星間分子雲から誕生します。分子雲の中で特に高密度の領域(コア)が収縮を始めると、中心に電離した高温ガスの核ができ、強い熱放射を始めて“星の卵”(原始星)となります。やがて、高温高密度の中心で核融合反応が開始すると、自ら光り輝く恒星(主系列星)となるのです。

オリオン大星雲の中には、電波観測で多数の分子雲コアが、赤外線観測でこれも多数の原始星が見つかっています。オリオン大星雲は、多量の恒星を生み出している巨大な「星のゆりかご」というべき場所です。

5定例観望会の解説資料から
(左)オリオン大星雲(クレジット:NASA)。この領域は、星の材料となるガスや塵が多量に集まった巨大な分子雲の一角で、これから星形成を始める分子雲コア、“星の卵”である原始星、若い主系列星への進化が起こっている。(右)定例観望会の解説資料から。

やがて、一足先に生まれた若い大質量の星が輝き始めると、放射によって付近の分子ガスを電離し、星の材料が吹き飛ばされて星形成は終了に向かいます。一方で、吹き飛ばされたガスは周囲の物質を圧縮し、密度が高まった分子ガスの中でまた新しい星形成が駆動されます。オリオン大星雲で起きているこの壮大な星形成の連鎖が、国立天文台の天文学専用スーパーコンピュータを使って解き明かされようとしています。広報ブログ記事「オリオン大星雲で星が生まれる」(2024年2月26日)もあわせてお読みください。

大質量の恒星は高密度の分子雲に深く埋もれて誕生し、そうした領域の多くは太陽系から遠いところに分布しているため、容易に解明が進みません。そんな中で、約1500光年という近距離にあるオリオン大星雲は絶好の観測対象です。活発な星形成領域を含む巨大な分子雲の複合体が広がるオリオン座は、天文学者の目もひきつけてやまない星座なのです。

定例観望会について

国立天文台三鷹では、天体望遠鏡を通して季節ごとに楽しめる天体を見ながら、遠い天体の素顔を学ぶ「定例観望会」を開催しています。2025年度は、基本的に月に1回、実際に望遠鏡をのぞいて、あるいは画面に映し出された映像で観望する現地開催(定員・事前申し込み)とオンライン開催のスタイルを取り合わせて開催します。

国立天文台三鷹 定例観望会

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