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2度あることは3度ある?―かんむり座Tの新星爆発に期待
新星・超新星は恒星の世界の大スター(文字通り)です。突然、もとの数千倍以上の明るさで輝き、数日から数百日後には見えなくなってしまいます。夜空で何もないと思っていた位置に突然現れるため、古くから「新しい星」、「お客さんの星」という意味の名称で呼ばれてきました。その実態は、もとあった恒星が表面爆発や全体を吹き飛ばす爆発を起こしたものと判明したのは、20世紀も後半になってからのことになります。中でも新星は、連星系を構成する白色矮星(わいせい)に伴星からガスが降り積もり、その表面が核爆発を起こすものです。
どの天体がいつ新星・超新星の爆発を起こすか、予測はいまだにほぼ不可能です。数少ない例外が、複数回の新星爆発が記録されている「反復新星(注)」になります。天の川銀河の中では、これまで10例の反復新星が知られています。その中でも肉眼で見えるほど明るくなるものが2つあり、その1つが近々爆発しそうだと期待されているのです。それが「かんむり座T」です。
かんむり座Tは、1866年5月と1946年2月に爆発が記録されています。2回だけの出現で3回目を予測するのは大胆ですが、同じ間隔ならば2025年から2026年頃に爆発が期待されることになります。ただし、他の反復新星の例を見ても、最短で爆発を繰り返す「さそり座U」では、爆発の間隔が8年から11年くらいの間で長短のぶれがあります。かんむり座Tでも、多少の間隔の長短はあるかもしれません。
かんむり座Tの場合、1946年の爆発の数年前に一番暗い状態よりも1等級明るくなったり、爆発の前年には少し暗く赤くなったり、という現象が記録されています。今回、これと同様の変動が数年ほど前から見られたことから、再爆発が近いとの声が昨年頃から上がっています。しかし2025年6月現在、かんむり座Tはまだ3度目の爆発を見せてくれていません。爆発の数年前から観測された明るさや色の変動は、表面爆発を起こす白色矮星本体に起因するものではありません。白色矮星とそれを取り巻くガス円盤、そしてガスを供給する伴星から成る連星系全体として生じる変動です。そのため、爆発そのものの指標にはならないのかもしれません。とは言え、2度あることは3度あると考えたいところで、数年のうちには必ずや、かんむり座Tの新星爆発が見られると大いに期待しています。
- (注)再帰新星、回帰新星、再発新星などとも呼ばれます。