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初夏の銀河を観望する―シリーズ・季節の天体 2025年6月

国立天文台三鷹で毎月開催している定例観望会で取り上げた天体をピックアップして、この季節ならではの宇宙の見どころをご紹介します。
銀河がひしめく星空の奥
全国的に梅雨入りが進んできたこの時期も、夜の早い時間帯に星空の目印となるのは、うしかい座のアルクトゥルス、おとめ座のスピカ、しし座のデネボラを結んで描かれる「春の大三角」です。その一帯に、1000個以上もの銀河が集まった「おとめ座銀河団」が広がっています。その中枢にある巨大楕円(だえん)銀河M87もこの季節ならではの観望対象です。銀河の中心にある超大質量ブラックホール周囲で「ブラックホールシャドウ」の撮像に成功したと発表されて話題になったのを覚えている方もいるでしょう。(参考リンク:M87とおとめ座銀河団(広報ブログ|2021年6月4日))
このように、春から初夏にかけての夜空は宇宙を深くのぞく窓になっていることを、5月の記事「春の銀河を観望する」(広報ブログ|2025年5月20日)でご紹介しました。今月のテーマも「銀河」です。
衝突する銀河たち
5月24日土曜日に開催された定例観望会では、「子持ち銀河」M51についてより深く掘り下げていきました。
M51は、卓越した2本の渦状腕(かじょうわん)が印象的です。このように顕著な渦状腕を持つ銀河は「グランドデザイン渦巻(うずまき)銀河」と呼ばれます。銀河に渦状の構造が発生するメカニズムはまだ解明の途中ですが、大学生のスタッフによる解説では、渦巻銀河M51と伴銀河NGC 5195が接近し、互いの重力で影響を及ぼし合い変形する途中で現在のような腕のパターンが生じる様子を再現したシミュレーション研究が紹介されました。もし伴銀河を持たなければ、M51は今とは違う姿を見せていたのでしょう。
M51に続いて観望したのは、先月の記事で「銀河考古学」の例として紹介したM81とM82。これらも相互作用を起こしている銀河群です。このように、実は銀河の合体は宇宙ではよくあることなのです。

詳しい解説はアーカイブ動画で
5月の定例観望会は、オンラインで開催されました。晴れていれば、50センチ公開望遠鏡からのリアルタイム映像を配信できるのですが、開催日であった24日土曜日はあいにくの雨。事前に動画に記録した銀河の姿をご紹介しました。オンライン開催の利点は、国立天文台のある三鷹から離れた地域の方にもご参加いただけること、そして天体の映像や解説を含めた配信内容を事後にも視聴していただけることです。開催から約1年間はアーカイブ映像を公開しています。
定例観望会について
国立天文台三鷹では、天体望遠鏡を通して季節ごとに楽しめる天体を見ながら、遠い天体の素顔を学ぶ「定例観望会」を開催しています。2025年度は、基本的に月に1回、実際に望遠鏡をのぞいて、あるいは画面に映し出された映像で観望する現地開催(定員・事前申し込み)とオンライン開催のスタイルを取り合わせて開催します。