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南の島の星空を石垣島天文台「天の川モニター」で眺める

著者近影早津夏己(国立天文台 石垣島天文台 特任研究員)

天の川モニターで眺める天の川
天の川モニターで眺める天の川(クレジット:国立天文台)

石垣島天文台では近年、「四大名物」として見学者の方々にPRしているものがあります。グリーンフラッシュ、月虹(げっこう)、南十字星(みなみじゅうじ座)、夏の天の川のことですが、全てを見たことがある人はそういないのではないでしょうか。

自然が相手ですから、短い旅程で四大名物と出会うには運も必要になります。石垣島天文台は小さいながらもファン層の厚い施設で、訪れたリピーターの方が「やっと見られた!」と目を輝かせて語っているのを見ると、こちらも嬉しくなります。ここ数年で旅行から足が遠のいた方も、石垣島でそういった素敵な体験をたくさんされるといいなと思います。

今回お題をいただいた天の川モニターは、2020年に設置され、家にいながら石垣の空を眺められるライブコンテンツとして親しまれてきました。毎年12月初旬から6月下旬のあいだは画角を変えて、南十字星モニターとして運用しています。つまり、石垣島天文台の四大名物の二つは、モニター越しに手軽に楽しむことができます。以前掲載された広報ブログ「石垣島天文台「南十字星モニター」の楽しみ方6選」は、ほとんどそのまま天の川モニターにも応用できます。

いつでも、好きな場所から天文に親しむ

ウェブサイトの訪問者数を見てみると、年間を通して熱心に天の川モニター、南十字星モニターのページに通ってくださる方々がいるようです。昨年11月の皆既月食中継の時にも話題にのぼり、視聴者の方から「親の顔より見た南十字星モニター」というネット特有のフレーズを用いたコメントが寄せられました。

屋上に上がってモニターのメンテナンスをしたり、居室から映像を確認したりしていると、色々なことに気づきます。月が出ていない時間帯の方が天の川は美しく映っていること、街明かりの影響、左上に映るむりかぶし望遠鏡の稼働する様子、人工衛星の多さや、たまに火球を捉えることもあります。

人によっては科学の枠を超えて、八重山の星文化やアニメ『恋する小惑星』の舞台であることを、モニター画面から想起される方もいるでしょう。石垣島天文台は、研究者のいる科学施設でありながら、天文というテーマがさまざまな方向性の興味を刺激する、稀有(けう)な場所でもあります。

夏の天の川を眺めるということは、我々の住んでいる天の川銀河の端から、星々が賑やかに集う天の川銀河の中心周辺を一望するということです。日常から離れて天の川モニターのページを訪れる方もいるかもしれませんが、その何気ない行動に宇宙規模の相似形が隠れていることになります。

リアルタイムの天気が悪そうなら、過去の空の様子をチェックしたり、ギャラリーやニュースをご覧いただきながら晴れ間を待つのもいいかもしれません。冒頭で紹介した四大名物の画像映像も置いてありますし、石垣島天文台の広報・教育・研究面における活動がまとめられています。そのうちのどれかが、皆様の天文への興味を喚起するきっかけになれば幸いです。

石垣島の天の川を体験しよう

現地で働いている身としては、やはり実際に来訪していただき、視界いっぱいの天の川を体感してほしいと思うところです。石垣島天文台は「空の良さ、地理的な良さ、設備の良さ」三拍子がそろっていると言われています。すなわち、偏西風やジェット気流の影響を受けにくいことによるシーイングの良さ、国内で最南端に位置することによる観測可能領域の特異性、九州沖縄地方で最大口径の光学望遠鏡「むりかぶし望遠鏡」を有している、という三拍子です。また、石垣島にはVERA石垣島局もあります。20メートルの電波望遠鏡は圧巻です。

石垣島天文台を訪れた際には、天の川モニターを探してみてください。モニターは全部で三つあり、全て芝生から見えます。真ん中にあるのが天の川モニターです。夜の観望会に参加された方は、お帰りの際にじっくりと目を暗順応させて、大気揺らぎの少ない、貼り付いたような満天の星々を堪能してください。

天の川モニターの位置(クレジット:国立天文台)
石垣島天文台と天の川(クレジット:国立天文台)

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