自然科学研究機構 国立天文台

88星座と国際天文学連合

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2022年8月10日午後8時、東京の空に現れる星座
2022年8月10日午後8時、東京の空に現れる星座(クレジット:加藤恒彦、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト) オリジナルサイズ(1.4MB)

星座

古来、夜空に輝く星を見て、穀物の収穫時期や雨期を知ったり、また星を頼りに大海原に船をこぎ出したりと、人間の営みは星と深く結びついていました。さらには、夜空の星のならびに想像を巡らせ、思い思いに星々を結んでは、さまざまな動物や器物に見立て名前をつけていました。これが後に「星座」と呼ばれるものになりました。

現在の「星座」は、名称、略号、星座の境界が、国際天文学連合(IAU)によって決められていて(constellation)、その数は88あります。星どうしを結んでできる形、北斗七星や夏の大三角等のアステリズム(asterism)とは区別されます。「星座」の決め方には、20世紀初めまで世界共通のルールがなく、その数も名前も空での範囲も、時代や人によりまちまちだったのです。

星座の乱立、混乱の時代

星座についてのまとまった記載は、アレクサンドリアの学者プトレマイオスが紀元前150年頃にまとめた『アルマゲスト』に見られます。これには、黄道に沿った12の星座をはじめとする48の星座が記されています。

中世のヨーロッパ諸国に伝わったプトレマイオスの48星座は、大航海時代以降に大きな変化を迎えました。南半球へ進出した航海者や、天文学者たちが、次々と新しい星座を考案するようになったのです。南半球から見える星々で作られた星座、小動物や器物の星座が、48星座の隙間を縫うように加えられ、やがては天文学者の経済的後援者である国王や貴族にちなんだ小さな星座まで加えられるようになりました。この星座の新設ブームによって、星座の境界線は曲がりくねり、既存の星座と同じ位置に新たな星座が重ねられ、夜空の星はいくつもの星座に属するという大混乱がもたらされ、それが19世紀初め頃まで続きました。

一方で、望遠鏡を使った天体観測が盛んになった18世紀以降には、より暗い恒星や変光星の名称を決めたり位置を表したりするために、標準的な星座の名前と星座の境界を明確にする必要が生じたのです。

IAUによる88星座の確定

1919年、世界中の天文学者から成る国際的組織、国際天文学連合(IAU)が発足しました。IAUとして取り組む最初の任務の一つとして、乱立状態にあった星座の整理とその境界の合理化が掲げられました。

1922年の第1回IAU総会では、整理された88の星座名と略号についての合意がなされました。続く1925年の第2回総会では星座の境界線が提案され、それが1928年の第3回総会で採択されました。こうしてIAUによって、プトレマイオスの48星座に、後世に考案された南天を中心とした星座を加えた88の星座が決められたのです。長い間混乱を極めた星座が整理され、世界共通で用いられる星座名が決められた第1回IAU総会から、2022年はちょうど100年となります。

星座の境界は赤経・赤緯の線に沿う直線で区切られ、恒星は必ずどれか一つの星座に重複なく属することになりました。そして、新たに発見された天体にも、不便なく星座に基づく命名ができるようになりました。この成果は、『Délimitation scientifique des constellations(星座の科学的な境界)』(デルポルテ著、仏語)にまとめられ、1930年に出版されました。

88星座の和訳名は、学術研究会議(現在の日本学術会議)によって考案・決定され、同会議が1944年に出版した『天文術語集』の中に記載されています。それがさらに改訂され、ひらがなまたはカタカナで表記することとされました。現在用いられている88星座の和訳名は、『学術用語集:天文学編』(文部省/日本天文学会著)に記載されているほか、毎年刊行される『理科年表』(国立天文台編)や、国立天文台ウェブサイト、天文学辞典(日本天文学会編)ウェブサイトでも確認することができます。

IAUによる星座名、星座境界線の例
IAUによる星座名、星座境界線の例(白く抜き出された領域が星座の範囲)。左がいて座、右がさそり座(クレジット:IAU and Sky & Telescopeオリジナルサイズ(170KB)

IAUの使命

現在のIAUは、世界中の国と地域から1万2000人以上の天文学者が会員として参加する組織となっています。IAUは、天体やその地形の命名や、前述の星座の整理のような天文学に関わる事柄についてのルールを定めるといった、大きな役割を担っています。また、研究面だけでなく、教育や、世界のあらゆる地域での天文学の発展を、国際協力によって遂行することも使命の一つとしています。

COVID-19の影響で翌年への延期を余儀なくされた第31回総会が、今年8月2日から11日までの日程で韓国の釜山にて開催されています。総会は、研究やIAUの施策についての専門的な議論の場であるだけでなく、開催地域の人々との交流を深める公開講演会、科学教育者向けのワークショップなども企画され、世界各地での天文学の広がりと発展を支援するというIAUの使命を象徴する場でもあるのです。

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文:小野智子(国立天文台 天文情報センター)