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東方最大離角を迎えた水星
2021年5月14日19時20分頃に撮影した写真です。月齢2.6の三日月が見えています。新月の直後、まだ明るい空に糸のような細さで見える月には、「繊月(せんげつ)」という呼称もありました。
その右側(北寄り)のやや低いところに、かすかに光る点が写っています。水星です。この日の空はかなりかすんでいて、肉眼で気づくのは難しい状況でした。
水星は、明け方や夕方の時間帯に低い高度でしか見ることができません。17日に水星が東方最大離角を迎えたこの5月は、高度が高く、2021年で最も観察しやすい時期になっています。早くも梅雨空が広がりつつありますが、夕方に晴れ間が訪れたら、国立天文台「ほしぞら情報」を観察のヒントにして、日の入り後の西の空に注目してみてください。
1日たち、月はより高い位置に移動しています。ちらほらと現れてくるのは、沈みゆく冬の星座。入れ替わるように、金星が少しずつ高度を上げてきますが、この日は低い雲の中。もう少し暗くなると水星もよりはっきり見えたはずなのですが、残念ながら間もなく広がってきた雲に覆い隠されてしまいました。
水星は、肉眼で見つけられるため古代から知られていた惑星です。しかし、その素顔はいまだ多くの謎に包まれています。太陽系の最も内側を公転する惑星を訪ねた探査機は、数少ないのです。今、2機の探査機がこの水星に向かっています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した水星磁気圏探査機「みお」と、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が担当する水星表面探査機「MPO」が連携して臨む水星探査計画「BepiColombo(ベピコロンボ)」は、初めての大規模で総合的な水星観測ミッションです。2018年10月に打ち上げられた探査機は、2025年12月に水星周回軌道に投入される予定です。
文・写真:内藤誠一郎(国立天文台 天文情報センター)