国立天文台 メールニュース
No.116(2013年9月5日発行)スーパーアースの空、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.116 (2013年9月5日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■スーパーアースの空 ■アルマ望遠鏡による中性炭素原子輝線の初観測 ■岡山天体物理観測所「特別観望会2013秋」のご案内[岡山] ----------------------------------------------------------- ■スーパーアースの空 近年、数多く発見されている太陽系外惑星の中に、地球と海王星 (注) の中 間の質量を持つ「スーパーアース」と呼ばれる新しいタイプの惑星が見つかる ようになってきました。中には、観測から惑星の大気の主成分を推測できるも のもあります。 地球から見て、系外惑星が主星の手前を横切る現象 (トランジット) を起こ す軌道を持っている場合、トランジットの際に、主星が減光されわずかに暗く 観測されます。この減光率を精密に測定することで、その惑星の大きさを見積 もることができます。加えて、観測する波長によって、トランジットの際の減 光率、つまり見積もられる系外惑星の大きさが、変化することも分かっていま す。このことから、系外惑星の大まかな大気組成を推測することも可能です。 国立天文台と東京大学の研究者を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡を 用いて、スーパーアース GJ 1214 b のトランジットの際の主星の減光率を観測 しました。観測の結果、この惑星の空には水素によるレイリー散乱の特徴が見 られませんでした。このことから、この惑星は、水蒸気を主成分とする大気を 持つか、もしくは、水素の厚い雲で覆われているか、どちらかだと推測されま した。さらに、過去の別の観測結果と合わせたところ、水蒸気を豊富に含んだ 大気を持つ可能性が高いことが明らかになりました。 研究チームは、GJ 3470 b というスーパーアースについても、岡山天体物理 観測所の2台の望遠鏡を用いて観測を行っています。この GJ 3470 b は、近赤 外線による観測で見積もった惑星の大きさが、可視光線によるものよりも小さ い結果になりました。仮に、惑星が厚い雲で覆われていると、トランジットの 際の主星の光は、観測波長によらず遮られて減光します。少なくともこの GJ 3470 b は、厚い雲がなく晴れた空を持っていると考えられます。 このように、スーパーアースの空は、どれも同じではなく、多様な姿をして いることが明らかになってきています。これからも発見されるであろう スーパーアースの空についても、詳細な観測が期待されます。 注:海王星の質量は地球の質量の約17倍。 ▽青い光で見るスーパーアースの空 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2013/09/03/j_index.html ▽晴天のスーパーアース? -低質量の太陽系外惑星GJ3470bの大気を初めて観測- http://www.oao.nao.ac.jp/public/research/gj3470b/ ■アルマ望遠鏡による中性炭素原子輝線の初観測 本格観測がスタートしたアルマ望遠鏡では、観測する周波数帯 (バンド) を 10に分けており、それぞれの周波数帯の受信機がすべてのアンテナに搭載され ています。この受信機の開発は、アルマ望遠鏡計画に参加している各国が分担 しています。日本はこのうちの、バンド4 (125-163ギガヘルツ、ミリ波)、 バンド8 (385-500ギガヘルツ、サブミリ波)、バンド10 (787-950ギガヘルツ、 テラヘルツ波) の3種類の受信機を担当し、国立天文台先端技術センターで開 発・製造を行いました。 2013年4月には、日本が開発した7メートルアンテナ5台にバンド8受信機を搭 載した試験観測を行いました。観測天体は惑星状星雲 NGC 6302 で、中心星の 周りの炭素原子が放つ492ギガヘルツの電波をみごとに捉えました。この中心 星の周りはガスとダストの円盤が取り巻いていると指摘されていて、今回観測 した炭素原子の分布はそれによく似ています。 電波干渉計でこの周波数帯の電波画像が取得されたのは今回が初めてで、今 後はアルマ望遠鏡を用いたこの周波数帯での高解像度の観測が期待されます。 ▽アルマ望遠鏡による中性炭素原子輝線の初観測: 500GHz帯での世界初の電波干渉計画像を取得 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2013/0902500ghz.html ■岡山天体物理観測所「特別観望会2013秋」のご案内[岡山] 国立天文台 岡山天体物理観測所は、ふだん共同利用観測に使用している188 センチメートル反射望遠鏡を使った一般向けの「特別観望会」を開催します。 現在、10月12日に開催する「特別観望会2013秋」の参加者を募集中です。観望 天体は、月と球状星団 M15 を予定しています。 参加ご希望の方は往復はがきでご応募ください。定員は100名、応募者多数の 場合は抽選となります。応募締め切りは9月20日 (必着) です。 皆様、奮ってご応募ください。 ▽「特別観望会2013秋」のご案内 (岡山天体物理観測所) http://www.oao.nao.ac.jp/public/event/sp2013f/ _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2013年9月5日 _____________________________________________________________________