国立天文台 メールニュース
No.62 (2011年11月24日発行) 家教授が紫綬褒章を受章、ほか
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.62 (2011年11月24日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- もくじ ■家教授が紫綬褒章を受章 ■小惑星同士の衝突で生じた奇妙な塵雲 ■若い星の周りの小さな渦巻き腕 ■初期宇宙の超モンスター銀河 ----------------------------------------------------------- ■家教授が紫綬褒章を受章 このたび、国立天文台の家 正則 (いえまさのり) 教授 (TMTプロジェクト室 長、ハワイ観測所) が、平成23年秋の褒章において、天文学研究功績による紫 綬 (しじゅ) 褒章を受章しました。 家教授は、すばる望遠鏡を用いた遠方宇宙の観測を行い、2006年には当時最 も遠くの銀河 IOK-1 を発見するなど、世界的な研究成果を上げました。現在は、 国際協力の下で進める次世代超大型望遠鏡 TMT (30メートル望遠鏡) 計画の日 本の代表者を務める傍ら、「宇宙史の暗黒時代」の解明に向けた精力的な研究 を続けています。 家教授は今年6月にも、「初期宇宙史の観測的研究とレーザーガイド星補償光 学装置の開発」の研究業績において、東レ科学技術賞を受賞しています。 秋の褒章は、11月3日に発令され、11月15日に東京都内にて伝達式が執り行わ れました。 ▽ハワイ観測所・家教授が紫綬褒章を受章 http://subarutelescope.org/Topics/2011/11/22/j_index.html ▽平成23年秋の叙勲等 (内閣府) http://www8.cao.go.jp/shokun/hatsurei/23aki.html ▽国立天文台 メールニュース No.40 家教授が東レ科学技術賞を受賞 http://www.nao.ac.jp/mailnews/data/0040.html ■小惑星同士の衝突で生じた奇妙な塵雲 ソウル大学の研究者を中心とする国際研究チームは、国立天文台のすばる望 遠鏡や石垣島天文台むりかぶし望遠鏡を用いた観測から、小惑星 Scheila (シーラ) に現れた奇妙な3つの尾 (塵 (ちり) 雲) の成因を詳細に解明するこ とに成功しました。 通常、小惑星は1つの点にしか見えませんが、この小惑星 Scheila には、 2010年12月頃、彗星 (すいせい) のような尾が、しかも3つ同時に観測されまし た。研究チームは、この謎の現象を解明するため、およそ3カ月にわたってこの 小惑星を観測し、その観測結果と塵粒子の軌道計算を比較しました。その結果、 この奇妙な3つの尾は、2010年12月2日21時から3日19時 (日本時間) の間に、直 径数十メートルの小惑星が後方から追突したために発生したものであることが 明らかになりました。 小惑星同士の衝突が現在の太陽系でも起こっていることは、これまでも考え られてきましたが、塵雲の解析から衝突日時や衝突方向などが明らかになった のは、初めてのことです。 ▽小惑星同士の衝突で生じた奇妙なチリ雲 ~ 観測・実験・理論の強力タッグで解き明かしたチリ雲の成因 ~ http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/10/19/j_index.html ■若い星の周りの小さな渦巻き腕 太陽に似た質量を持つ若い星 SAO 206462 の周りに小さな渦巻き腕状の円盤 が存在することが、すばる望遠鏡に取り付けた HiCIAO (ハイチャオ、新コロナ グラフカメラ) での観測によって発見されました。今回撮影された画像では、 2本の渦巻き腕がはっきり確認できます。この構造は、この天体では初めて見つ かったもので、これまでハッブル宇宙望遠鏡などによる観測でも知られていま せんでした。 若い星の周りに見られる円盤は、惑星誕生の現場であると考えられています が、今回の観測結果は生まれつつあるかもしれない惑星と円盤構造との関係を 調べる上で重要な鍵になると考えられます。 この観測は、すばる望遠鏡の戦略枠プロジェクトSEEDS (シーズ:Strategic Exploration of Exoplanets and Disks with Subaru) の一環として行われま した。SEEDSは惑星とその誕生現場を直接観測により系統的に探査するプロジェ クトです。 ▽若い星のまわりの小さなうずまき腕 http://subarutelescope.org/Pressrelease/2011/10/26/j_index.html ▽Spiral Arms Point to Possible Planets in a Star's Dusty Disk (NASA) http://www.nasa.gov/topics/universe/features/possible-planets.html (英語) ▽SEEDSプロジェクト http://seeds.mtk.nao.ac.jp/seeds/SEEDS_Project/TOP.html ■初期宇宙の超モンスター銀河 東京大学、国立天文台の研究者を中心とする国際研究チームは、これまで知 られてきた初期宇宙の爆発的星形成銀河 (モンスター銀河) の10倍以上明るい 銀河を、南米チリにあるアステ望遠鏡を用いた観測で発見しました。 このような「超モンスター銀河」とも呼べるほどの明るさの銀河は非常にま れで、これまでにアステ望遠鏡で発見されたおよそ1000個のモンスター銀河の 頂点に君臨する、モンスター銀河の王とも言えるものです。このことから、研 究チームはこの銀河を八岐大蛇 (やまたのおろち) にちなんで「オロチ」と命 名しました。 この「オロチ」の観測データを詳しく調べたところ、この天体からの電波が、 重力レンズ効果により実際よりも強く観測されている可能性が高いことが明ら かになりました。 この珍しい銀河「オロチ」は、今後初期宇宙の星形成を研究する上で、絶好 の研究対象になると期待されています。 ▽初期宇宙のモンスター銀河の王「オロチ」! http://www.nro.nao.ac.jp/news/2011/orochi/yan_jiu_gai_yao.html ▽115億光年彼方に爆発的星形成銀河の集団を発見 http://www.nro.nao.ac.jp/~tamura/pressrelease/monster/index.html _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2011年11月24日 _____________________________________________________________________