国立天文台 メールニュース

No.61 (2011年11月22日発行) 衝突銀河での分子ガスの物理状態と運動を解明、ほか

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    国立天文台 メールニュース No.61  (2011年11月22日発行)
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もくじ
■衝突銀河での分子ガスの物理状態と運動を解明
■大学共同利用機関シンポジウム 2011
■広瀬さん、板垣さん、くじら座方向にある銀河に超新星を発見
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■衝突銀河での分子ガスの物理状態と運動を解明

 東京大学および国立天文台の研究者を中心とする国際研究チームは、ハワイ
にある米国のサブミリ波干渉計 (SMA) を用いた観測を行い、からす座方向に
ある触角銀河 (別名:アンテナ銀河、NGC 4038/4039) を過去の同様の観測に
比べて10倍高い解像度で捉えました。
 触角銀河は、二つの渦巻銀河が衝突している衝突銀河で、そのなかでも地球
から最も近い距離 (およそ7000万光年) にあることが知られています。
 解析の結果、二つの銀河の中心だけでなく、それらが衝突している領域でも、
局所的に分子ガスの温度と密度が高い領域が見つかりました。近い将来、この
領域から星の大集団が誕生することが予想されます。また、得られた分子ガス
の運動では、南側の銀河 (NGC 4039) に、銀河中心に流れ込む成分や銀河中心
の周りを回転する成分が見つかりました。とくに銀河中心へのガスの流れ込み
は、巨大ブラックホールの成長にも関連することから、注目すべきガスの運動
と言えます。
 研究チームは、この天体のさらに詳細な研究のため、今後、初期科学運用が
開始されたアルマ望遠鏡での観測を目指しています。

 ▽銀河の衝突による星団の誕生、ブラックホールの成長!?
   (国立天文台 野辺山)
  http://www.nro.nao.ac.jp/news/2011/antennae/index.html


■大学共同利用機関シンポジウム 2011

 大学共同利用機関は、多種多様な研究分野における「全大学の共同利用の研
究所」として個々の大学の枠を超えた共同研究を推進する研究機関です。
 このたび、4つの大学共同利用機関法人 (注) は、独立行政法人宇宙航空研
究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所 (ISAS)、国立大学法人総合研究大学院大
学と合同で、大学共同利用機関シンポジウム 2011「万物は流転する」を開催
します。このシンポジウムでは、東日本大震災への取り組みを含めて、大学共
同利用機関が行っている研究の成果を、講演およびブース展示を通じて紹介し
ます。
 多くの皆様のご参加をお待ちしています。

 開催概要
  日時:2011年11月26日 (土) 12:00-17:00
  会場:ベルサール秋葉原 2階 イベントホール
      (東京都千代田区外神田3-12-8)
  主催:大学共同利用機関協議会
  その他:入場無料、事前申し込み不要

 プログラム等の詳細は、ウェブサイトをご覧ください

 注:人間文化研究機構 (NIHU)、自然科学研究機構 (NINS)、高エネルギー
   加速器研究機構 (KEK)、情報・システム研究機構 (ROIS)

 ▽大学共同利用機関シンポジウム 2011
  http://int-univ-symp2011.kek.jp/


■広瀬さん、板垣さん、くじら座方向にある銀河に超新星を発見

 神奈川県茅ヶ崎市の広瀬洋治 (ひろせようじ) さんは、10月31日 (世界時、
以下同じ) の観測から、くじら座方向にある NGC 881 銀河の中に16.2等の超
新星らしき天体を発見しました。この発見は、国際天文学連合電報中央局に
報告され、この超新星は「2011hk」と命名されました。

 ・発見日時 2011年10月31.585日 = 10月31日14時2分 (世界時)
 ・発見位置 赤経 2時 18分 45.81秒
       赤緯 -6度 38分 30.5秒 (2000年分点)

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんもまた、10月31日にこの
天体を観測しており、独立発見と認められました。

 広瀬さんによる超新星の発見は、2008年12月の「2008ie」の独立発見以来で、
通算6個目 (独立発見を含む) です。また、板垣さんによる超新星の発見は、今
年に入ってから7個目、通算では73個目 (独立発見を含む) となりました。

 ▽参照
  CBET No. 2892 : SUPERNOVA 2011hk IN NGC 881 = PSN J02184584-0638304
    (2011 Nov 2)

 ▽日本人が発見した超新星一覧
  http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2011年11月22日

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