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すばる望遠鏡の発見をNASAが注目―天の川銀河最果ての星形成をジェイムズ・ウェッブ望遠鏡が捉える―
すばる望遠鏡が発見した天の川銀河の最果てにある星形成領域を、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を用いた観測で鮮明に捉えることに成功しました。すばる望遠鏡による観測結果が米国航空宇宙局(NASA)の研究者の関心を引き、国際的な共同研究として実を結びました。
中心から遠く離れた最果てにある天の川銀河の最外縁部の環境は、太陽系付近とは異なっています。特に星間物質に含まれる重い元素の割合が、太陽系近傍の5分の1から10分の1と少ないことから、誕生から間もない頃の天の川銀河の環境と似通っていると考えられています。こういった始原的な環境下では、どのようにして星が生まれるのでしょうか。また、太陽系近傍での星形成との違いはあるのでしょうか。これらの謎に挑むため、岐阜大学と国立天文台の研究者を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡を用いた観測で、天の川銀河の最外縁部で複数の星形成領域を発見しました。
この結果に注目したNASAのジェット推進研究所の研究者が、研究チームに共同研究を提案して、JWSTを用いた観測が行われました。その結果、星形成領域の内部で、星の進化の中でも最も初期の段階にある天体の候補や、若い星から噴き出した複数のジェットの構造、星形成領域を取り囲む特徴的な星間ダストの構造などを、鮮明に捉えることができました。
岐阜大学で共同研究を進める国立天文台の泉奈都子(いずみ なつこ)特任研究員は、「これほど活発な星形成や壮大なジェットを見ることができるとは予想していませんでした」と、JWSTの画像を見たときの驚きを語ります。天の川銀河の最外縁部で、これほど壮大なジェット構造が鮮明に捉えられたのは初めてのことです。研究チームは、この星形成領域にある個々の星の性質に加えて、ジェット等の構造の性質を詳細に検証し、誕生間もない頃の天の川銀河でどのように星形成が起こっていたのかを解明したいと考えています。すばる望遠鏡とJWSTがタッグを組んだ研究はこれからも次々と進んでいくでしょう。