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当時世界最大のミリ波電波望遠鏡の革新的な技術が電波天文学の進歩に大きく貢献 国立天文台と三菱電機で開発の野辺山45メートル電波望遠鏡が「IEEEマイルストーン」に認定
このプレスリリースは、2017年6月14日に国立天文台と三菱電機株式会社が共同発表したものです。
自然科学研究機構 国立天文台と三菱電機株式会社により1982年に完成した野辺山45メートル電波望遠鏡が、このたびIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)から「IEEEマイルストーン」に認定されました。数多くの技術的な困難を克服して当時世界最大のミリ波電波望遠鏡として高い性能を実現し、巨大ブラックホールの発見など画期的な成果を挙げ、現在に至るまで世界第一線の電波望遠鏡として活躍し続けていることが評価されたものです。
これからも、国立天文台は知の地平線を広げるため、大型天文研究施設を開発・建設し共同利用に供するとともに、これらを活用し世界の先端研究機関として天文学の発展に寄与して、天文に関する成果・情報提供を通じて社会に貢献してまいります。また、三菱電機は、保有する世界最先端の大型望遠鏡技術を通じて国立天文台の活動を支え、人類の知的基盤の充実化や、活力とゆとりある社会の実現に貢献してまいります。
なお、今回IEEEから贈呈された業績を記した銘板は、国立天文台三鷹キャンパス、同野辺山宇宙電波観測所および三菱電機通信機製作所に展示します。
ミリ波電波天文学における世界最大のアンテナとして、45メートル望遠鏡は1982年に東京天文台と三菱電機株式会社により完成しました。高精度・高感度な電波観測を可能にした45メートル望遠鏡の革新的な技術は、電波天文学の進歩に大きな貢献をしました。なかでも、多数の星間分子の発見とブラックホールの発見はたいへん有名です。
贈呈された「IEEEマイルストーン」銘板(写真)とその記載内容
野辺山45メートル電波望遠鏡について
野辺山45メートル電波望遠鏡の構想は1967年までさかのぼります。当時としては未開拓の電波領域であるミリ波で、宇宙のさまざまな分子の電波を分光観測し、星の形成過程や銀河系の構造など、宇宙の新しい観測分野を開拓しようという野心的な計画で、世界の電波望遠鏡の口径11メートルが最大だった時代に45メートルという世界最大の大口径をねらいました。
国立天文台(当時は東京天文台)の宇宙電波グループと三菱電機の技術陣との間で、徹底的に議論検討を重ね、大型の機械構造物が変形することなく目的の方向を指向できるようホモロガス変形法やマスター・コリメータ方式、主鏡骨組を断熱材で覆い通風させ熱変形を抑制する方式など、多くの画期的な新規技術を開発・投入しました。これらの技術は今日の大型望遠鏡やアンテナでも用いられている必須技術となっています。
野辺山45メートル電波望遠鏡は、観測開始から35年を経過した今日でも波長3ミリメートル近辺のミリ波の観測では世界最高性能の電波望遠鏡のひとつであり、計画当時の構想がいかに先進的であったかがうかがえます。 なお、国立天文台は「IEEEマイルストーン」の認定を受けるのは今回が初めてです。三菱電機は、これまでに気象庁の「富士山レーダー」(2000年認定)とKDDIの「太平洋横断TV 衛星中継」(2009年認定)に製造業者として関わったほか、2015年5月に「MUレーダー」で京都大学生存圏研究所とともに認定を受けました。
「IEEE」および「IEEEマイルストーン」について
IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)は電気・電子・情報・通信分野の世界最大の専門家組織です。本部はアメリカにあり、世界160カ国以上に42万人を超える会員を擁しています(2016年末時点)。日本の会員数は1万4,266人(2016年12月時点)です。
「IEEEマイルストーン」は、電気・電子・情報・通信分野において達成された画期的なイノベーションの中で、開発から少なくとも25年以上経過し、地域社会や産業の発展に多大な貢献をしたと認定される歴史的業績を表彰する制度で、1983年に創設されました。そのねらいは、優れた技術成果に光を当てると共に、それを生み出した技術者に対する社会一般の理解と評価を高めることにあります。
野辺山45メートル電波望遠鏡の諸元
- 製品名
- 野辺山45m電波望遠鏡
- 設置場所
- 国立天文台野辺山宇宙電波観測所
- アンテナ方式
- カセグレン変形クーデ方式
- アンテナ直径
- 45m
- 鏡面誤差
- 0.1mm
- 観測周波数
- 1~150 GHz(ギガヘルツ)
- 解像力最高
- 0.004°
- アンテナ重量
- 約700t
- 参考URL
- https://www.nro.nao.ac.jp/public/teles.html
http://www.nro.nao.ac.jp/~nro45mrt/html/
http://www.mitsubishielectric.co.jp/society/space/telescope/
認定に対するコメント
林 正彦 国立天文台長
野辺山宇宙電波観測所の45メートル電波望遠鏡が、IEEEマイルストーンの認定を受けたことは、国立天文台としてたいへんな栄誉であり、誠に喜ばしく思います。45メートル電波望遠鏡は、日本が初めて臨んだ大型望遠鏡計画であり、巨大ブラックホールの発見など画期的な成果を挙げ、その後のすばる望遠鏡やアルマ望遠鏡への端緒となるものでした。ご支援いただいた多くの皆様に感謝申し上げるとともに、この栄誉をともに喜びたいと存じます。
柵山正樹 三菱電機株式会社 執行役社長
45メートル電波望遠鏡が栄誉あるIEEEマイルストーンに認定され、たいへん光栄で誇らしく感じております。また、このような歴史に残る製品の開発・製造の機会を与えてくださった国立天文台の諸先生方に深く感謝いたします。今後も当社は「持続可能な社会」と「安全・安心・快適性」が両立する豊かな社会構築に貢献する「グローバル環境先進企業」を目指してまいります。