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平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を国立天文台の研究者が受賞

水沢VLBI観測所・VERAプロジェクトの研究者が、平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(研究部門)を受賞しました。受賞者は、水沢VLBI観測所の本間希樹(ほんま まれき)教授・同所長(注1)、小林秀行(こばやし ひでゆき)教授・国立天文台副台長(注1)、廣田朋也(ひろた ともや)助教(注2)の3名です。
受賞対象となった業績は「VERA 2ビーム電波望遠鏡の開発に基づく銀河系構造の研究」です。VERAプロジェクトでは、直径20メートルの電波望遠鏡を水沢(岩手県奥州市)、入来(鹿児島県薩摩川内市)、小笠原(東京都小笠原村)、石垣(沖縄県石垣市)の4カ所に配置し、VLBIの手法を用いて天体の位置を高い精度で観測しています。さらに、目的天体と位置基準天体を一つの電波望遠鏡で同時に観測する「2ビーム同時観測」システムを開発し、10マイクロ秒角(月面上の1円玉を地球から見たときの大きさに相当)という超高精度の天体位置計測を実現しています。VERAプロジェクトは、この超高精度の位置計測により銀河系内天体の精密な地図作りを進め、さらに、天体の距離と運動から銀河系の回転速度や質量を精度よく求めることで銀河系の3次元構造を明らかにし、銀河系についての理解が進むことに大きく貢献しました。
また、同表彰の若手科学者賞を、太陽系外惑星探査プロジェクト室の成田憲保(なりた のりお)助教(注3)が受賞しました。受賞対象となった業績は「系外巨大惑星の軌道進化に関する先駆的な観測的研究」です。
成田氏は、すばる望遠鏡を用いた観測で、太陽系外惑星系「HAT-P-7」に逆行して公転する惑星を世界で初めて発見しました。さらに、この惑星系に別の長周期の巨大惑星を発見したり、主星と連星系を成す伴星の存在を確認したりして、これらの巨大惑星や伴星の存在が惑星の軌道進化に影響を与えて逆行惑星を作り出した可能性を示唆しました。成田氏は、こういった一連の研究で、太陽系の常識とは大きく異なる惑星系の多様性を明らかにしました。近年は、系外惑星の大気を調べる観測を行うなど、太陽系外惑星の研究をさらに精力的に進めています。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を表彰しその功績を讃えることで、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的としています。今年度の表彰式は、2017年4月19日に文部科学省(東京都千代田区)にて執り行われました。
(注1)総合研究大学院大学 物理科学研究科天文科学専攻 教授(併任)本文へ戻る
(注2)総合研究大学院大学 物理科学研究科天文科学専攻 助教(併任)本文へ戻る
(注3)東京大学大学院理学系研究科 助教、自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター 助教(併任)本文へ戻る