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滝脇氏と秦氏が日本天文学会研究奨励賞を受賞

このたび、国立天文台理論研究部の滝脇知也(たきわきともや)助教(注1)と、水沢VLBI観測所の秦和弘(はだかずひろ)助教(注1)が、2016年度日本天文学会研究奨励賞(注2)を受賞しました。
滝脇氏の研究について
滝脇氏の受賞対象となった研究は「大規模3次元シミュレーションに基づく重力崩壊型超新星の爆発機構に関する理論的研究」です。
大質量星の進化の最期に起こる重力崩壊型超新星爆発は、重力崩壊から爆発に至るメカニズムがいまだに完全には解明されていません。滝脇氏は、3次元数値シミュレーションの計算手法を開拓し、それを大型計算機で実行することで、恒星の中心核で起こる重力崩壊から爆発の開始に至る物理過程を再現することに成功しました。この再現には、恒星内部の構造を空間的に非対称とすることが重要な点でした。さらに、大質量星の自転に起因する新しい爆発機構もシミュレーションを通じて発見しました。
今後は、滝脇氏が開拓した計算手法をさらに推し進め、次世代計算機を用いた長時間にわたる3次元計算の結果を観測と比較することで、超新星爆発の理解がより進み、天体の爆発現象の解明が大きく進展することが期待されます。
秦氏の研究について
秦氏の受賞対象となった研究は「高分解能VLBIによる巨大ブラックホールジェット生成・収束・加速領域の観測的研究」です。
活動銀河中心核ブラックホールからのジェットの放射は、銀河サイズを超えて大きく広がる大規模な天体現象です。秦氏は、超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて、M87銀河のブラックホールジェットの詳細な観測研究を行いました。特に、M87銀河のブラックホールジェットを最も高い分解能で観測することに成功し、そのジェットの根元の位置を精密測定して、ブラックホールの位置と電波で見えるジェットの構造との関係を解明しました。また、ジェットの形状の詳細な観測からその加速機構を推測することに成功しました。
これらの成果は、近く始動する、サブミリ波VLBI観測による巨大ブラックホールの直接観測プロジェクトで行われるM87銀河のブラックホールの詳細観測に大きく貢献します。
この授賞式は、2017年3月に開催された日本天文学会2017年春季年会会期中に行われました。
(注1)総合研究大学院大学 物理科学研究科天文科学専攻 助教(併任)本文へ戻る
(注2)日本天文学会研究奨励賞は、1988年度に創設された日本天文学会による表彰制度で、優れた研究成果を挙げている若手天文学者を表彰するものです。本文へ戻る