• トピックス

新国立天文台長に、林 正彦が就任しました

この4月から国立天文台長を務めることとなりました。

日本が困難な状況にあるなか、国立天文台に与えられた責務をよく考え、進むべき将来の方向を見定めていきたいと思っています。

現在、国立天文台ではALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の建設が最終段階に入っています。この干渉計は、日本の電波天文学者の夢でした。大学院生のころ、私は野辺山ミリ波干渉計を使った観測を経験し、その素晴らしい性能に感動した覚えがあります。この干渉計のアンテナ数を増やせば、他の望遠鏡ではとても見ることのできない精細な宇宙の姿が撮れる。それは大学院生の目から見ても自明でした。ただ、その干渉計は最高の場所に作らないと性能が生きません。当時、すばる望遠鏡をハワイに建設しようとする機運が高まっていました。次世代大型干渉計は国外のベストサイトに作る。それは全く自然な流れでした。野辺山宇宙電波観測所の完成から30周年を迎える時期に、その計画がALMAとして実現することを思うと、感慨深いものがあります。多くの日本の研究者、特に若い大学院生や研究員が、ALMAを使った観測で第一線の成果を挙げるでしょう。彼らには、研究で得た感動を、広く日本の人々に伝えてほしいと思います。

すばる望遠鏡は、1999年1月28日にファーストライトの発表を行なってから、すでに13年が経過しました。現在では、すばる望遠鏡の観測結果を使った学術論文は、およそ3日に1編の割合で発表されています。広い視野を一度に撮影できる性能で、すばる望遠鏡は他の同クラスの望遠鏡の追随を許しません。この性能を生かして、宇宙最遠方の天体の発見や、初期宇宙での大規模構造の検出など、突出した成果を挙げてきました。今年は、これまで10年以上使ってきた広視野カメラ(すばる主焦点カメラ)に比べて、10倍広い視野を一度に撮影できる「超」広視野カメラ(ハイパー・スプリーム・カメラ)が稼働する予定です。このカメラは、ダークエネルギーや銀河の形成史の研究に、圧倒的な力を発揮するでしょう。

すばる望遠鏡は、その優れた光学性能でも定評があります。この性能を生かして、太陽系外惑星の直接撮像も進展しています。すばる望遠鏡では形成された惑星が見えるのに対し、ALMAではその材料が見えますから、両方の望遠鏡の特徴を生かして相補的な研究を進めることで、惑星系の形成過程が理解されていくでしょう。それは、宇宙における生命の研究へと発展することは間違いありません。

地球のような海のある惑星を直接検出し、そこに生命の兆候を探す。そのために、私たちはもう一歩先に進みたいと考えています。すばる望遠鏡からさほど遠くないところに建設される直径30mの次世代大型光学赤外線望遠鏡の実現によって、それは手の届くところに来ると思っています。

林正彦

このページをシェアする