• 研究成果

宇宙初期に観測史上最少の酸素量を持つ極小銀河を発見―宇宙の化石天体の起源に迫る―

巨大銀河団の重力レンズが暴いた極小銀河LAP1-Bの素顔
巨大銀河団の重力レンズが暴いた極小銀河LAP1-Bの素顔(左上の拡大画像)。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線分光器のデータを3色合成して作成した。この銀河は星の数が少なく極めて暗いため、JWSTの近赤外線カメラで撮影した巨大銀河団の画像ではその姿を確認できず、分光観測によって初めて捉えることに成功した。拡大画像で見る銀河の形状は、銀河内のガスの運動を表している。(クレジット:NASA, ESA, CSA & K. Nakajima et al., Nature) 画像(703KB)

宇宙誕生から約8億年後の時代にある極めて暗く小さな極小銀河「LAP1-B」を、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で観測した結果、この銀河に含まれる酸素の割合が観測史上最少の値であることが示されました。さらに解析したところ、この銀河は、現在の天の川銀河の周辺に存在し極めて星の数が少ない謎の天体「超低光度矮小(わいしょう)銀河」(Ultra-Faint Dwarf、以下UFD銀河)の、生まれて間もない頃の姿かもしれないことが分かりました。宇宙初期に誕生した化石天体と考えられてきたUFD銀河について、その誕生と進化の謎を解き明かす糸口として画期的な成果です。

ビッグバン直後の宇宙には水素とヘリウムといった軽い元素しか存在せず、酸素や炭素などの重い元素はその後に起こった恒星の誕生と進化によって作られました。宇宙で最初に誕生した「初代星」がいつどのように元素を作り出し始めたのか、それを探ることは、現代天文学における最重要課題の一つです。しかし、宇宙初期の銀河はあまりに暗く小さいため、詳しく調べることは極めて困難でした。

金沢大学や国立天文台などの研究者から成る国際研究チームは、赤外線域の分光能力が極めて高いJWSTを用い、さらに巨大銀河団の重力で遠くの天体からの光が増幅される重力レンズ効果を利用することで、LAP1-Bを捉え、詳細な性質を明らかにしました。この銀河は、これまで観測された銀河の中でも酸素存在比が極端に少なく、また酸素に比べて炭素の割合が極めて高いという特徴を示しました。後者は、理論的に予測された初代星が放出する元素分布とよく一致します。

さらにこの銀河の質量を推定したところ、銀河を構成する星の総質量は太陽の3300倍以下と極めて小さく、銀河の質量の大部分がダークマターで構成されていることも分かりました。この特徴は、UFD銀河とよく似ています。今回の成果は、UFD銀河の誕生や進化を解明する重要な手掛かりになると期待されます。

研究チームの代表である金沢大学の中島王彦(なかじま・きみひこ)准教授は、「データに現れた圧倒的な酸素の欠乏を見たときは、思わず興奮しました。これほどピュアな状態の銀河が存在し、その姿をここまで克明に捉えられたことは、まさに驚きです」と語ります。また、研究チームの主要メンバーである国立天文台および東京大学宇宙線研究所の大内正己(おおうち・まさみ)教授は、「この銀河を詳しく調べることで、UFD銀河がなぜ宇宙の化石として現在までその姿を保っているのか、その謎に迫ることができると期待しています」と今後を展望しています。

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金沢大学

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