• 研究成果

星のゆりかごに広がる放射状ガス構造の起源を解明

星形成領域Mon R2で実際に観測されたハブ・フィラメント系分子雲と本研究のシミュレーションで形成された構造の比較
星形成領域Mon R2で実際に観測されたハブ・フィラメント系分子雲(左)(クレジット:M.S.N. Kumar, ESA/Herschel, NASA/JPL-Caltech (Spitzer))と本研究のシミュレーションで形成された構造(右)(クレジット:S. Nozaki & S. Inutsuka)の比較。どちらも中心領域へ向かって複数の細長いフィラメント構造が放射状に集まる特徴を持っている。 画像(718KB)

星は、「分子雲」とよばれる低温の星間ガスの中で誕生します。近年、複数の細長い分子雲が放射状に集まった「ハブ・フィラメント系分子雲」という構造が観測によって見つかってきています。このような構造がどうやってできるのか、コンピュータ・シミュレーションが描き出しました。

ハブ・フィラメント系分子雲は、大質量星や星団が形成される場所として注目されています。これまでの理論研究では、超新星爆発や近くの大質量星からの放射などによって引き起こされる星間衝撃波と分子雲中の磁場の相互作用によって、細長いフィラメント状の分子雲が形成されると理解されてきましたが、放射状に並ぶハブ構造がどのようにして作られるのかは謎でした。

九州大学と名古屋大学の研究者から成る研究チームは、実際の分子雲では重力の影響によって磁場が中心に向かってくびれた砂時計のような構造を持つ場合があることに着目しました。そのような磁場を持つ分子雲に、高速の星間衝撃波がぶつかったときに何が起こるのかを、国立天文台が運用する天文学専用スーパーコンピュータ「アテルイIII」を用いたシミュレーションによって調べました。

シミュレーションでは、次のような現象が見られました。衝撃波が星間ガスを通過すると、ガスが掃き集められます。星間ガスは磁力線に沿って運動をする性質があるため、集められた星間ガスは砂時計型にくびれた磁場の影響で流れの向きが変わります。そして磁場に沿って中心に向かって集まりながら細い流れに分裂することで、フィラメント状の分子雲が放射状に並ぶ構造が形成されたのです。さらに、このようにして作られたフィラメント状の構造を通じて、高密度なガスが中心領域に運ばれていることも示されました。このシミュレーションで作られたフィラメント状分子雲の長さや幅、ガスの流れる向きは、実際に観測されたハブ・フィラメント系分子雲のものとよく一致しています。

今回の研究成果は、ハブ・フィラメント系分子雲で観測されているさまざまな特徴が、星間衝撃波と砂時計型の磁場の衝突という一つの現象で説明できることを示しました。銀河の中で、星や星団がどのような場所に、どのような条件のもとで生まれるのかの理解を深めることにつながる成果です。

ハブ・フィラメント系分子雲が形成される様子の数値シミュレーション。星間衝撃波が分子雲を通過した後に、ハブ・フィラメント系分子雲に特徴的な、中心へ向かって放射状に並ぶ複数のフィラメントが発達する様子が描き出されている。左図は星間衝撃波の進行方向に対して横から見た図、右図は星間衝撃波がやってくる方向から見た図である。左上の数字は計算開始後の経過時間を表している。なお、右図は左図よりも高密度なガスが分かりやすいよう、異なる密度範囲で表示している。(クレジット:野﨑信吾(九州大学))

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