• 研究成果

新たな画像作成法が明らかにした原始惑星系円盤の構造の進化過程

へびつかい座の星形成領域に分布する原始惑星系円盤の画像
へびつかい座の星形成領域に分布する原始惑星系円盤の画像。各パネルの、左下の楕円(だえん)のマークは解像度を表し、小さいほど解像度が高いことを意味しています。右下の白線は30天文単位を表す目盛りです。左列から右列へ向かって、また同じ列では上から下へと、中心の恒星の年齢は高くなり、円盤の構造の進化が進んでいます。(クレジット:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), A. Shoshi et al.) 画像(927KB)

アルマ望遠鏡の公開観測データから、新たな画像作成の方法を使って多数の原始惑星系円盤を描き出すことで、円盤の中の構造が生じる時期と条件が絞り込まれてきました。原始惑星系円盤の構造はどのように進化していくのか、そして惑星はいつ、どうやって生まれるのかを理解する上で、たいへん重要な知見です。

惑星は、形成されたばかりの恒星を取り囲んだガスと塵(ちり)から成る、原始惑星系円盤の中で誕生します。形成が始まってから100万年以上経った恒星の原始惑星系円盤には、同心円状やらせん状といった特徴的な構造が観測されています。これは、円盤内ですでに惑星が誕生した証拠であると考えられています。一方、形成から10万年以内の恒星の原始惑星系円盤には、このような構造がほとんど見られません。このことから、惑星は恒星の形成が始まってから10万年から100万年の間に誕生することが示唆されています。しかし、この年齢の原始惑星系円盤については高解像度での観測の例が少ないため、円盤内の構造の進化について、その途中経過はよく分かっていませんでした。

今回研究チームは、アルマ望遠鏡の観測で得られた公開データを、新たな画像作成法を使用して再解析し、へびつかい座の星形成領域に含まれる78個の原始惑星系円盤の姿を描き出しました。その半数以上では、従来の方法の約3倍以上の解像度を達成していました。これまでの観測例と合わせて統計的に解析した結果、恒星が作られてから数十万年経った時期に、半径が30天文単位以上の円盤に特徴的な構造が現れ始めることが分かりました。研究チームの中心である、九州大学大学院 博士課程の所司歩夢(しょし あゆむ)さんは、「中心星周囲に分子ガスや塵が豊富に残っている、これまで信じられてきたよりも非常に若い段階で、すでに惑星が形成されており、若い星と共に成長していくことを意味しています」と語ります。

今回の成果は、新たな画像作成法の使用が、高い解像度と多数のサンプルの両立を可能にしたことから初めて得られました。研究チームは今後、他の星形成領域と比較することで、惑星が誕生する時期や条件が普遍的なものかどうかを明らかにしていこうと計画しています。

詳細記事

アルマ望遠鏡

このページをシェアする