• 研究成果

宇宙生命探査の鍵となる「太陽系外の金星」を発見

地球から約40光年離れた低温の恒星をまわる、地球サイズの太陽系外惑星「グリーゼ 12 b」の想像図。
地球から約40光年離れた低温の恒星をまわる、地球サイズの太陽系外惑星「グリーゼ 12 b」の想像図。この図ではグリーゼ 12 b の薄い大気が描かれていますが、惑星が実際にどのような大気を持つのかはまだ分かっておらず、今後の研究によって明らかになることが期待されます。(クレジット:NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (Caltech-IPAC)) 画像(1.8MB)

地球からわずか40光年の距離に、太陽よりも低温の恒星のまわりを周回し、地球や金星と同程度の大きさを持つ太陽系外惑星「グリーゼ 12 b」が、発見されました。この惑星が恒星から受け取る日射量は、太陽系において金星が太陽から受けるものと同程度と考えられます。また、惑星の大気が宇宙空間に散逸せずに一定量留まっている可能性があります。これらのことから、過去に発見された系外惑星に比べて、「金星のような惑星の大気の特徴を、地球と比較しつつ調べるのに最も適した惑星」と言えます。今後、グリーゼ 12 bの大気の詳細な調査が、惑星が生命の居住に適した環境を持つための条件についての理解を、大きく進歩させると期待されます。

多種多様な生命を育む私たちの地球は、特別な惑星なのでしょうか? それとも、広い宇宙の中ではありふれた存在なのでしょうか? 人類にとって根源的とも言えるこの問いに答えるため、1990年代以降はさまざまな検出方法による系外惑星の探索が行われてきました。その結果、系外惑星の発見数は現在5500個を超えています。中には、地球程度の小さなサイズの惑星も数多く含まれていますが、ほとんどは太陽系から遠く、惑星の詳細を知ることはこれまで困難でした。近年は、太陽系の近くにあり、M型星と呼ばれる太陽よりも軽く小さな恒星を周回する惑星についての探査が精力的に進められ、その詳細を調べるための研究が進んでいます。

今回発見された惑星の主星「グリーゼ 12」は、太陽の約4分の1の大きさのM型星です。この恒星のまわりを周回する惑星の探索が、2019年よりすばる望遠鏡の赤外線分光器IRD(InfraRed Doppler、アイ・アール・ディー)を用いて行われてきました。その一方で、2023年に、NASAの宇宙望遠鏡TESS(テス)によって、地球サイズの惑星の候補が発見されました。アストロバイオロジーセンター、東京大学、国立天文台の研究者らが率いる国際研究チームは、多色撮像カメラMuSCAT(マスカット)シリーズなどを用いてこの惑星候補の追観測を行い、惑星の存在を確かめるとともに、TESSやIRDによる観測データを含めた解析を行いました。そして、この惑星は公転周期が12.8日、半径が地球の約0.96倍、質量の上限値が地球の3.9倍であることを明らかにしました。

この惑星グリーゼ 12 bは、地球・太陽間の距離の0.07倍と主星のごく近くを公転しています。しかし、主星の温度が低いことから、主星から受ける日射量は地球の日射量の約1.6倍で、金星と同程度に留まっています。現在の金星の表層には液体の水は存在しませんが、過去に存在した可能性が指摘されています。同じように条件によっては、グリーゼ 12 bにも過去に液体の水が存在した、もしくは現在も存在する可能性が、残されています。自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンターの葛原昌幸(くずはら まさゆき)特任助教は、「今後のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による詳細観測や、将来の30メートル級地上望遠鏡によるトランジット分光観測や直接観測によって、この惑星がどのような大気を持つのか、水蒸気、酸素、二酸化炭素などの生命に関連のある成分が存在するのか、明らかになる」と期待します。

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アストロバイオロジーセンター

すばる望遠鏡

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