• 研究成果

赤ちゃん星の“くしゃみ”を捉えたか?―アルマ望遠鏡が目撃したダイナミックな磁束放出―

赤ちゃん星から“くしゃみ”によって磁束が放出される様子の想像図
赤ちゃん星から“くしゃみ”によって磁束が放出される様子の想像図。明るい円盤の中心に赤ちゃん星があり、その円盤の縁から磁束が放出される瞬間を表している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)) 画像(1.6MB)

星が誕生する際に磁束を一気に放出する現象が作ったと推定される構造が、アルマ望遠鏡による観測で発見されました。“くしゃみ”にも例えられるこの現象は、長年の謎であった星の誕生の理解を大きく進めるものとなると期待されます。

太陽のような星は、星の卵である分子雲コアが重力によって収縮して誕生します。収縮する際に、分子雲コアがもともと持っている角運動量と磁場を失わなければ、私たちが観測できるような星へと成長することはできません。分子雲コアが磁場を失う仕組みについて、天文学者は長い間議論を続けてきました。

おうし座分子雲は地球からの距離が約450光年で、私たちから最も近くにある星の誕生の現場です。その中にある分子雲コアの一つに潜む原始星、つまり赤ちゃん星を、アルマ望遠鏡を用いて観測しました。その結果、赤ちゃん星を取り巻く円盤から、数天文単位の大きさを持つとげのような構造を、世界で初めて発見しました。研究チームは、円盤の縁に磁力が集中した際に、突発的な爆発現象のように短時間で磁束が放出されることを、理論研究との比較から明らかにしました。短時間で一気に磁力を外に放出する様子は、ほこりやウイルスを空気とともに一気に押し出すくしゃみにも似ています。くしゃみによって分子雲コアにガスの空洞が作られ、その周りにできたリング状のガスの濃い部分が、とげのような形で観測されたと考えられます。また、この分子雲コアで過去に観測されていた弓状の構造も、同様の現象で形成された可能性が同時に浮かび上がりました。

研究チームを率いる、九州大学で研究を進める国立天文台の徳田一起(とくだ かずき)特任助教は、「赤ちゃん星で観測されるガスの流れ出しは角運動量を吐き出す“産声”に例えられますが、それよりも穏やかな“くしゃみ”によって磁束が流れ出す様子が捉えられたと考えられます」と、今回の発見を説明します。このくしゃみが起こる条件を詳しく調べることによって、赤ちゃん星自身の成長過程やその周りにある惑星の起源となる物質への理解が、急速に進むと期待されます。

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九州大学

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