• 研究成果

うみへび座銀河団で謎の電波放射を発見

うみへび座銀河団で発見された、新たな電波放射(カラー)
うみへび座銀河団で発見された、新たな電波放射(カラー)。線で示されたX線放射が銀河団中心から対称的に分布しているのに対して、電波放射は異なる分布をしている。(クレジット:藏原昂平) 画像(622KB)

私たちからの距離が近いうみへび座銀河団の中で、新たな電波放射が発見されました。この電波がどのような機構で放射されているかは未解明ですが、銀河団の性質や進化を理解するための重要な手がかりとなる可能性があります。

銀河団は、数百から数千個の銀河が集まった巨大な質量を持つ天体です。銀河団から検出される、高温ガスから放たれるX線や、光速に近い速さで運動する粒子(宇宙線)を加速させるエネルギー源は、銀河団の膨大な重力エネルギーであると考えられています。しかし、どのようにしてこれらに変換されるのか、その機構はまだ十分に理解されていません。その鍵を握るのは、銀河団同士の衝突ではないかとも考えられています。ところが、たとえば地球から1億光年あまりという比較的近い距離にあるうみへび座銀河団では、過去数十億年の間に銀河団同士が衝突した痕跡があるにもかかわらず、X線や宇宙線の観測では衝突の影響が見られないという謎がありました。

国立天文台や名古屋大学の研究者から成る研究チームは、従来の電波観測の周波数に比べて低い周波数の観測データに注目しました。データアーカイブに新しい解析手段を適用することでより高い感度を実現し、うみへび座銀河団の中のある領域に、今までに報告されていない広がった電波放射を、複数の周波数で発見することに成功しました。一方でこの領域には、可視光線ではこの電波放射に対応する明確な天体は見つかっていません。これまでのX線観測でも、衝突に由来する特徴的な構造は見つかっていないことから、日本の新たなX線分光撮像衛星XRISM(クリズム)による今後の詳細な観測が待たれます。

今回の発見により、従来よりも低い周波数での観測の重要性が着目されます。研究チームを率いる国立天文台の藏原昂平(くらはら こうへい)特任研究員は、「次世代の超大型電波望遠鏡SKA(エスケーエー)の観測に今回の解析手法を適用することで、新たな研究成果がもたらされるでしょう」と語ります。同様の電波放射を多くの銀河団で捉えることで、銀河団の進化や宇宙線の加速メカニズムの解明につながることが期待されます。

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水沢VLBI観測所

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