- 研究成果
宇宙初代の巨大質量星の明確な痕跡を発見
宇宙で最初に生まれた星々の中には、質量が太陽の140倍分以上の巨大質量星が存在していたことが、すばる望遠鏡などを用いた観測によって初めて明確に示されました。ビッグバン後の初期宇宙でどのように星が生まれるのかを理解する上で、重要な研究成果です。
宇宙で最初に生まれた星々(初代星)は、水素とヘリウムのみから成るガス雲から誕生しました。その後、初代星の中で起こる核融合や超新星爆発によって作り出された新たな元素が、多様な物質の世界を形作る最初の一歩となります。初代星には、現在の宇宙にはほとんど存在しない大質量星が多く含まれていた可能性が、理論的に示されています。太陽の140倍を超える質量の星では、それよりも軽い星で起こるものとは異なるメカニズムの特殊な超新星爆発が起こり、第2世代の星の元素組成にその痕跡を残すと予想されてきました。
国立天文台と中国国家天文台等の研究者から成る国際研究チームは、天の川銀河の中に生き残っている第2世代の星の候補を中国の分光探査望遠鏡LAMOSTを用いて多数見つけ出し、すばる望遠鏡を用いた観測でそれらの詳細な元素組成を測定する研究を積み重ねてきました。その結果、そのうちの一つである「LAMOST J101051.9+235850.2」が、特殊な超新星爆発で作り出される特徴的な元素組成を示すことを発見しました。初期宇宙で太陽質量の140倍以上もの巨大質量星が形成されたとする理論を、強く支持する結果です。
次に解き明かすべき大きな課題は、初代星のうち巨大質量星の割合がどのくらいだったのかという疑問です。その解明にはさらに多数の第2世代の星を探査し、その元素組成を測定する研究を進める必要があります。研究チームは今後も、観測例を増やして初代星の謎を解き明かしていくことを計画しています。
この研究成果は、Qian-Fan Xing et al. “A metal-poor star with abundances from a pair-instability supernova”として、英国の科学雑誌『ネイチャー』に2023年6月7日付で掲載されました。