自然科学研究機構 国立天文台

131億光年かなたに潜む超巨大ブラックホールの前兆を発見

研究成果

超巨大ブラックホールの前兆を示す天体「GNz7q」の想像図
超巨大ブラックホールの前兆を示す天体「GNz7q」の想像図。活発な星生成を起こす銀河の中心で急激に成長しているブラックホールが、周りを覆うガスや塵を吹き飛ばして、姿を現しつつあります。(クレジット: ESA/Hubble, N. Bartmann) オリジナルサイズ(900KB)

およそ131億光年かなたの遠方宇宙に潜む、塵(ちり)に覆われた非常にコンパクトな天体が、ハッブル宇宙望遠鏡、すばる望遠鏡などの宇宙望遠鏡や地上望遠鏡による観測画像から発見されました。この天体は、銀河の中で急激に成長しているブラックホールの特徴を示していました。理論的に予測されていながらも長年見つかっていなかったこのような天体の発見は、宇宙初期における超巨大ブラックホールの成長の謎に迫る重要な成果です。

銀河中心の超巨大ブラックホールの存在は、誕生から数億年後の初期宇宙でも数多く確認されています。宇宙誕生からの時間がごく短いにもかかわらず、ブラックホールがこれほどまでに成長する過程は、まだよく理解されていません。その過程は、大筋では次のように考えられています。星を活発に生成している銀河において、ガスや塵に覆われた中心ではブラックホールが周囲の物質を捉えて急成長します。その際、ブラックホールに落ち込む物質から放射されるエネルギーはガスや塵を吹き飛ばして明るく輝き、中心の超巨大ブラックホールのようすが見えるようになるのです。この過程の最初にあたる活発な星生成を起こす銀河と、最後にあたる超巨大ブラックホールに落ち込む物質から放射されるエネルギーは、実際に観測されています。しかし、両者をつなぐ過渡期にあたる天体は、問題となっている初期宇宙の時代には見つかっていませんでした。

きわめて遠方にある天体のようすを理解するために、ごく狭いながらもさまざまな手段による詳細な観測データが得られている領域があります。国際研究チームは、その一つである「GOODS-North」と呼ばれる領域のデータをこのたびあらためて解析し、その結果、超巨大ブラックホールの前兆を示す天体「GNz7q」を発見しました。今後超巨大ブラックホールに成長する過渡期の天体が示す性質は、コンピュータシミュレーションで推測されていましたが、今回発見した天体は、X線から電波に至る波長域においてそれによく合う特徴を持っていたのです。広い波長域に渡る詳細なデータが存在したからこそ成し遂げた発見です。特に、すばる望遠鏡で得られた近赤外線による観測データは、ブラックホールからの放射と、星生成を起こす銀河からの放射とを分離するのにたいへん役に立ちました。

このような天体が狭い領域の中で発見されたことは、同種の天体はこれまで見逃されていただけで、実は推定されてきたよりも多い可能性を示しているのかもしれません。研究チームは今後、類似の天体を系統的に探索し、それらをアルマ望遠鏡やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って詳細に観測を進める計画です。

本研究成果は、Fujimoto et al. “A dusty compact object bridging galaxies and quasars at cosmic dawn”として、英国の科学雑誌『ネイチャー』に2022年4月13日付で掲載されました。

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