自然科学研究機構 国立天文台

世界初!宇宙空間の多くの分子からの電波を同時に受信するシステムの開発に成功 —宇宙の進化や星・惑星が形成されるメカニズムの解明に向けて—

研究成果

オリオン座分子雲における分子の広がりを、今回開発した広帯域受信機で同時に観測したようす
オリオン座分子雲における分子の広がりを、今回開発した広帯域受信機で同時に観測したようす。同位体分子によって広がりが異なることが分かります。 (Credit: 大阪府立大学/国立天文台) オリジナルサイズ(248KB)

星が生まれる現場にはさまざまな分子が存在し、それぞれの分子からは異なる周波数の電波が放出されています。その電波を、従来と比べて広い周波数の範囲で同時に観測できる新しい受信システムを開発し、その試験観測に成功しました。この技術の応用が、銀河の進化や、星・惑星の形成メカニズムの研究に、大きな進歩をもたらすことが期待されます。

宇宙空間に存在する、星や惑星のもとになるガスや塵(ちり)の集まりは、星間分子雲として観測されます。この星間分子雲に含まれるさまざまな分子からは、種類ごとに異なる周波数の電波が放たれていますが、その周波数はたいへん広い範囲にわたります。さまざまな分子から放たれる電波を観測して星間分子雲の性質や化学組成を知ることで、星や惑星が形成される様子の解明につなげることができます。このため、広い範囲にわたる周波数の電波を一度に観測できる受信システムの開発が求められてきました。

大阪府立大学と国立天文台の研究者から成る研究グループは、電波望遠鏡に搭載する電波受信機の各種コンポーネントの広帯域化を行いました。それを受信機システム全体として結合することによって、一度に受信できる電波の周波数帯域を従来よりも数倍、拡大することに成功しました。現在のアルマ望遠鏡で2種類の受信機(230ギガヘルツ帯と345ギガヘルツ帯)を用いて受信している周波数帯を、1種類の受信機で同時に受信できることになるのです。さらにこの受信機システムを、国立天文台 野辺山宇宙電波観測所内に設置している大阪府立大学の1.85メートル電波望遠鏡に搭載して、実際の天体からの電波を捉えることにも成功しました。この開発研究が、実際の天文学観測においても極めて有用であることが示されたのです。

さまざまな分子から放たれる多種多様な電波を、一度に検出可能にするこの技術によって、天の川銀河内の星間分子雲をより一層効率よく詳細に観測できるようになりました。これまでに多くの成果を上げてきたアルマ望遠鏡の性能をさらに向上させる将来計画(注)においても、受信機の広帯域化が重点項目として取り上げられていることから、本成果はアルマ望遠鏡や他の大型電波望遠鏡へ応用されることが期待されます。この技術は、銀河の進化や星・惑星の形成メカニズムなど、宇宙の進化の解明に大きく貢献することでしょう。

この研究成果は、『日本天文学会欧文研究報告(Publications of the Astronomical Society of Japan)』に、次の2本の論文としてオンライン版に掲載されました。

(注)アルマ望遠鏡の性能をさらに向上させ、さらに天文学研究を進展させるための技術開発項目が国際的に議論され、「アルマ望遠鏡将来開発ロードマップ」として公表されています。また、このような国際的な枠組みに応じてアルマ望遠鏡の機能強化に取り組む日本の計画を「アルマ2」としています。 本文へ戻る

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