自然科学研究機構 国立天文台

天の川銀河の中心部に「赤ちゃん星の巣」を発見

研究成果

図:アルマ望遠鏡が観測した、3つの領域における多数の原始星とそこから噴き出す高速ガス流(アウトフロー)。
アルマ望遠鏡が観測した、3つの領域における多数の原始星とそこから噴き出す高速ガス流(アウトフロー)。地球に近づく方向に動くアウトフローを青色、遠ざかる方向に動くアウトフローを赤色、原始星周辺に分布する塵(ちり)の分布を黄色として合成した画像。細長く伸びる赤色や青色のアウトフローの根元に、個々の原始星が位置しています。 Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Lu et al. オリジナルサイズ(1.5MB)

アルマ望遠鏡による観測から、天の川銀河の中心部に多数の赤ちゃん星(原始星)が隠されていることが分かりました。これまでこの領域は星の誕生には適さない環境だと考えられていましたが、今回多数の原始星が発見されたことから、星の誕生の基本的物理過程は周囲の環境にそれほど影響されないと考えられます。今回の成果は、天の川銀河の中心部で今後激しい星形成活動が起こる可能性を示唆しています。

星は、宇宙に浮かぶガス雲が重力によって収縮し形成されます。もし、重力によるこの過程が何らかの理由で妨げられると、星が形成されにくくなると考えられます。天の川銀河の中心近くでは、星形成に必要な重力に対抗する効果がいくつも存在します。例えば、激しい乱流状態になっているガスが重力で集まりにくくなっていたり、強い磁場で支えられたガスが重力によって収縮しにくくなっていたりしています。このため、天の川銀河の中心部では、ほかの領域に比べて星形成の効率がずっと低いことが知られていました。

国立天文台の研究者を中心とした国際研究チームは、天の川銀河中心部での星形成の実態を探るために、アルマ望遠鏡を使った観測を行いました。この領域には大量のガスがあるにもかかわらず、これまで星形成の兆候は捉えられていませんでした。ところが近年アルマ望遠鏡を用いた観測で、800個を超えるガスの塊が発見されたことから、研究チームは今回、それらを詳細に観測しました。そして、星形成の兆候である原始星から噴き出す高速ガス流(アウトフロー)を43個発見したのです。アルマ望遠鏡の高い感度と解像度のたまものです。

800個ものガス塊がある領域でアウトフローが43個しか見つからなかったことは、新たな謎となりました。天の川銀河の中心部での星形成活動はごく初期の段階であり、今後激しい星形成活動が起こる可能性があります。研究チームは、アルマ望遠鏡を用いてより高解像度の観測を行い、天の川銀河内の他の星形成領域の観測結果と比較することで、さまざまな環境下での星の誕生の過程を理解する研究を進めています。

この研究成果は、Xing Lu et al. “ALMA Observations of Massive Clouds in the Central Molecular Zone: Ubiquitous Protostellar Outflows”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2021年3月16日付で掲載されました。

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