自然科学研究機構 国立天文台

TAMA300で実証した量子雑音を抑える新技術

研究成果

画像:TAMA300を改造して構築したフィルター共振器の心臓部。
TAMA300を改造して構築したフィルター共振器の心臓部。(クレジット:国立天文台) オリジナルサイズ(242KB)

重力波望遠鏡の感度を上げる新たな技術が世界で初めて開発され、その実証に成功しました。この開発と実証には、国立天文台三鷹にある重力波検出器TAMA300が用いられました。今後この技術を、大型低温重力波望遠鏡KAGRAをはじめ現在運用中の重力波望遠鏡に適用することで、数多くの重力波現象が捉えられると期待できます。

2015年の史上初の重力波の直接検出という業績に、2017年ノーベル物理学賞が授与されたのは記憶に新しいところです。 現在稼働中の干渉計型重力波望遠鏡は、重力波到達時に離れた鏡の間に生じるわずかな距離の変化を精密に測定して、重力波を検出します。鏡の間は数キロメートル離れているものの、その変化は極めて小さく、量子力学的に避けられないゆらぎまでも制御しなければ重力波の検出はできません。このゆらぎは、波の位相と振幅との両方に現れ、どちらかを小さく抑えるともう一方が大きくなるという性質があります。位相のゆらぎは高周波数の雑音を、振幅のゆらぎは低周波の雑音を発生させます。周波数に応じて小さくしたいゆらぎを選ぶことができれば、雑音を小さくできます。

国立天文台重力波プロジェクトの研究者を中心とした研究チームは、三鷹キャンパスにあるTAMA300を改造し、ゆらぎを制御する技術の開発を行いました。TAMA300は300メートルの基線長を持つプロトタイプのレーザー干渉計型重力波検出器です。研究チームは長さ300メートルのフィルター共振器を構築し、この長い基線長と、KAGRAの開発で培われた防振制御などの最新技術を応用して、大型重力波望遠鏡で必要とされる100ヘルツ以下という低周波におけるゆらぎの制御の実現に成功したのです。このような低い周波数でのゆらぎの制御はたいへん難しく、これまで成功例がありませんでした。

この技術は、KAGRAのみならず、米国のLIGO、欧州のVirgoといった世界中の重力波望遠鏡の次期アップグレードで採用される予定で、その実現性を世界に先駆けて実証したことはたいへん大きな意義があります。この技術を実装することで、現在よりも感度は約2倍、観測可能な重力波現象の数は8倍となります。より多くの重力波現象を観測することで、ブラックホール連星の形成過程や一般相対性理論の精密検証、中性子星の諸性質の解明や、宇宙における重元素の起源など、我々の宇宙に関するさまざまな新しい知見が得られることが期待されます。

この研究成果は、Zhao, Y., et al. “A frequency-dependent squeezed vacuum source for broadband quantum noise reduction in advanced gravitational-wave detectors”として、2020年4月28日付けの米国の物理学専門誌『フィジカル・レビュー・レターズ』に掲載されます。米国・マサチューセッツ工科大学の研究グループも16メートルのフィルター共振器で同様の成果を達成し、同じ号で論文を発表します。

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