- 研究成果
生命が居住可能な惑星にスーパーフレアが与える影響
スーパーフレアは恒星の表面が大爆発を起こす現象です。恒星に近い軌道をまわる生命居住に適した惑星にスーパーフレアが及ぼす影響を、モデルに基づき定量的に評価したところ、惑星の大気組成や大気圧などの違いによって、惑星表面の環境への影響が大いに異なることが明らかになりました。
近年、たくさんの太陽系外惑星(以下、系外惑星)が発見されています。なかには水が液体として存在し、生命が居住可能だと考えられる惑星も多数あり、M型星と呼ばれる太陽よりも表面温度が低く光度も暗い恒星の周囲で、特に多く発見されています。M型星のなかには表面爆発を起こすものがあり、この爆発が生命の居住可能性に影響するのではないかと議論されています。しかし、その影響の大きさについては定量的な扱いが難しく、詳細はこれまで不明でした。
京都大学、国立天文台、日本原子力研究開発機構、米国航空宇宙局ゴダード宇宙飛行センター(NASA/GSFC)などの研究者から成る国際研究チームは、恒星の表面爆発の発生頻度やエネルギー分布、惑星の大気の組成や厚みなどを考慮したモデルを構築し、実在の系外惑星の半径や軌道の大きさを適用して、スーパーフレアが惑星の地表に及ぼす放射線の強度を推定しました。その結果、惑星に地球程度の濃い大気が存在すれば、地表の放射線の強度は生命環境に影響するほどにならないことが分かりました。一方、太陽系に最も近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」で発見された系外惑星では、恒星から受ける強い紫外線のため宇宙空間に散逸する大気の量が地球の70倍以上と大きく、大気が薄くなります。この惑星では、スーパーフレアによる放射線が生命環境にとって致命的な強度になる可能性があることを、初めて定量的に評価したのです。
研究チームは今後、より多くの系外惑星系にモデルを適用し、どの系外惑星が生命を育む可能性が高いか評価を続ける予定です。また、太陽系内の惑星にも同じモデルを用いて、宇宙放射線が月や火星における人間活動へ及ぼす影響を調べていきたいと考えています。