• 研究成果

星の重元素が語る天の川銀河の合体史

すばる望遠鏡の高分散分光器HDS
すばる望遠鏡の高分散分光器HDS 画像(307KB)

すばる望遠鏡を用いた観測により、特徴的な元素組成を持つ恒星が発見されました。この恒星は、私たちが住む天の川銀河ではなく、矮小(わいしょう)銀河と呼ばれる小さな銀河の中で生まれ、後に銀河どうしの合体を経て天の川銀河の一員となったと考えられます。

ビッグバン以来、宇宙に存在する元素の割合は、恒星の中心で起こる元素合成や、恒星の爆発時などに起こる元素合成によって、変化してきました。変化の仕方は、環境によって異なります。恒星に含まれる元素の組成を調べることで、その恒星が誕生した環境を推定することができます。

国立天文台、中国国家天文台などの研究者から成る研究チームは、中国の分光探査望遠鏡LAMOSTによる探査で選び出した恒星を、すばる望遠鏡に搭載した高分散分光器HDSで詳細に観測するという共同研究を2014年から続けています。研究チームは、これまで観測した400個を超える恒星の中に、元素組成に際立った特徴のある恒星を発見しました。こういった恒星が天の川銀河で見つかったのは初めてですが、天の川銀河を取り巻く矮小銀河ではこれまでにいくつか見つかっています。この恒星は矮小銀河の中で誕生したものの、母体である矮小銀河が後に天の川銀河と合体した結果、現在は天の川銀河の一員となっていると考えられます。また、この恒星の母体である矮小銀河が誕生してから天の川銀河と合体するまでは、ある程度の時間が経過していたことが示唆されました。

天の川銀河のような大きな銀河は、周囲にある小さな銀河との衝突・合体を何度も繰り返して成長してきました。恒星の元素組成を調べることは、天の川銀河の成長の歴史を研究していく手掛かりとなるのです。

この研究成果は、イギリスのオンライン天文学専門誌「ネイチャー・アストロノミー」に4月29日付で掲載されました。

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