- 研究成果
ガンマ線バーストの放射メカニズムにせまる―スペクトルと明るさの相関関係の起源を解明―

「ガンマ線バースト」は宇宙最大の爆発現象として知られています。その起源の一部は、大質量星が一生の最期に起こす大爆発の際に形成するジェットによると考えられています。しかし、そのジェットからのガンマ線の放射メカニズムは、長い間謎とされてきました。
理化学研究所の伊藤裕貴研究員らによる研究チームは、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」などを用いて大規模シミュレーションを行い、ガンマ線バーストが起こる際は、「光球面放射モデル」と呼ばれるメカニズムでガンマ線が放射されることを強く示唆する結果を得ました。光球面放射モデルは、ジェットに閉じ込められたガンマ線が、ジェットの膨張とともに解放されるという説です。従来のモデルでは説明できなかったガンマ線バーストの特徴が説明できることで注目されていましたが、十分に精査はされていませんでした。
今回、伊藤研究員らは、現実的な条件に基づいた光球面放射モデルの大規模シミュレーションを行いました。そして、ジェットが大質量星の内部から物質を突き抜ける際に形成する構造に起因して、ガンマ線バーストのスペクトルと明るさの相関関係が生じることを示しました。この相関関係は、ガンマ線バーストの観測から経験的に得られた「米徳(よねとく)関係」として知られており、ガンマ線バーストの放射の主な成分の性質を捉えていると考えられてきました。現実的な光球面放射のシミュレーションによって米徳関係が自然に再現されたことは、ガンマ線バーストの主要な放射メカニズムが光球面放射であることを強く示しています。この結果は、大質量星の爆発の過程を解き明かすことにつながる成果です。
この研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に2019年4月3日付で掲載されました。