• 研究成果

回転軸の傾きがそろわない原始惑星系円盤―惑星軌道は最初から不揃い?―

図:原始惑星系円盤の想像図。
内側と外側で回転軸の傾きがずれる「ワープ構造」をした原始惑星系円盤の想像図。 画像(2.5MB)

星と惑星系は、銀河の中に漂うガスや塵の雲が自らの重力で収縮することで誕生します。生まれたばかりの原始星の周りでは、原始星に流れ込もうとするガスや塵が円盤を形作ります。この円盤の中で将来惑星が誕生することから、原始惑星系円盤と呼ばれています。このため、原始惑星系円盤の形成過程を理解することは、惑星が誕生する過程の解明に直結します。

近年観測されている太陽系外の惑星系には、さまざまな性質のものがあります。特に、複数の惑星がある系でそれぞれの惑星軌道の回転軸の傾きが異なる惑星系や、主星と惑星軌道の回転軸の傾きがずれた惑星系なども発見され、これらがどのように作られたのかが問題となっていました。

理化学研究所の坂井南美(さかい なみ)主任研究員、イーチェン・チァン基礎科学特別研究員と千葉大学の花輪知幸(はなわ ともゆき)教授らの共同研究グループは、アルマ望遠鏡を用いて、おうし座の方向、地球から450光年の距離にある原始星「IRAS 04368+2557」を観測しました。その結果、この原始星を取り巻く円盤の回転軸の傾きに、内側と外側でずれがあることを見いだしました。このようなずれは、伴星を持つ系で見つかったことはありますが、伴星を持たない、かつ非常に若い原始星の周囲の円盤で発見されたのは、初めてのことです。

ガス円盤の回転軸のずれは、原始星や円盤へ外から流入してくるガスの量や向きが時間と共に変化していることを示しています。そもそも原始星の周りのガスには濃淡があるため、原始星や円盤に向かって流れこんでくるガスの量や向きが時間変動し、円盤の回転軸にずれが生じるのは、むしろ自然であると言えます。今回の成果は、この考えを観測的に直接実証したものとして大きな意義を持ちます。また、こうした現象はどの天体でも起こり得る一般的なものかもしれません。さまざまな構造の惑星系の起源解明に向けて、他の原始星を取り巻く円盤の詳細な観測が待たれます。

この研究結果は、英国の科学雑誌『ネイチャー』オンライン版にSakai et al. 2018, Nature “A warped disk around an infant protostar”として2018年12月31日付けで掲載されました。

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